前回はcystic fibrosisと気管支拡張症まででした。
今回は、COPD、慢性副鼻腔炎、喘息について。
*感染症以外のマクロライド臨床試験の続き*
~COPD、慢性副鼻腔炎、喘息~
3.Chronic obstructive pulmonary disease
・[Respir Med 2005; 99: 208–215.]
対象:中等症~重症COPD 67例
方法:clarithromycinとプラセボのprospective double-blind randomised controlled trial
3カ月のclarithromycin therapyの、健康状態・増悪回数・痰の菌数に対する検討
結果:St George’s Respiratory Questionnaire symptom scoreと36-item short-form health survey physical function score で有意差あり。その他はなし。
・WILKINSON et al. [Thorax 2007; 62: Suppl. 3, A15.]
対象:109例のCOPD
方法:erythromycinとプラセボの比較(1年間)
増悪の治療回数をprimary outcome
結果:placeboで増悪の治療回数多い(odds ratio 1.48; p=0.004)
・COPDへのmacrolide therapyの研究は、とても少ない (クリックで拡大)

→大規模な検討が望まれる
4.Chronic rhinosinusitis
・いくつかのopen-label studiesあり
Acta Otolaryngol Suppl 1996; 525: 73–78.
Otolaryngol Head Neck Surg 2002; 126: 481–489.
Acta Med Okayama 1997; 51: 33–37.
・[Otolaryngol Head Neck Surg 2002; 126: 481–489.]
対象:17例の慢性副鼻腔炎術後患者
方法:prospective open-label study
erythromycin treatment
結果:3・12カ月のフォローで、サッカリンテストと症状の改善(鼻閉・頭痛・鼻炎)を認めた
・最初のdouble-blind randomised placebo-controlled study
[Laryngoscope 2006; 116: 189–193.]
対象:慢性副鼻腔炎64例
方法:low-dose macrolide therapy in chronic rhinosinusitis
3 months’roxithromycin treatment
結果:rhinosinusitis-specific quality-of-life scores
(20-item Sino-Nasal Outcome Test (SNOT-20))
saccharin transit time
nasal endoscopic scoring
nasal lavage levels of IL-8
において、有意な改善あり
*IgEレベルが低い患者で、より良いアウトカムが得られた
*治療中止後3カ月のときに、SNOT-20再評価→また悪化していた
→すばらしい結果だが、もう少しスタディが必要
5.Asthma
・randomised double-blind placebo-controlled trialsが結構あり(クリックで拡大)

・機序
direct antimicrobial activity
alteration of steroid metabolism
anti-inflammatory effects [Eur Respir J 2004; 23: 714–717.]
・初期のスタディ
1.oral steroid-dependent asthmaticsへのtroleandomycin
→ steroid-sparing roleがあることを報告
ZEIGER et al.のopen-label study [J Allergy Clin Immunol 1980; 66: 438–446.]
ステロイド減量中でも、症状と呼吸機能の改善認められた
2.KAMADA et al. [J Allergy Clin Immunol 1993; 91: 873–882.]
18 severe steroid-dependent asthmatic children
→ troleandomycin + methylprednisolone group の方が、
placeboより必要とする経口ステロイド量が少なかった
*FEV1の改善は認められず
3.Troleandomycinがmethylprednisoloneの排泄を遅らせるという報告あり
[J Allergy Clin Immunol 1980; 66: 447–451.]
→しかし、75例のsteroid-dependent asthmaticsに対して、2年間のtroleandomycin±methylprednisoloneのdouble-blind placebo-controlled trialでは、ステロイドの減量・喘息のコントロールに差がなかった
*さらに、骨粗鬆症がマクロライド群で多かった [Am Rev Respir Dis 1993; 147: 398–404.]
(最初にも紹介しましたが、残念な研究結果)
*ここでクラミジアやマイコプラズマの話が出てくる・・・
・atypical organisms(クラミジアやマイコプラズマ)による慢性感染が喘息の重症度に影響するとの報告あり
[J Allergy Clin Immunol 2001; 107: 595–601,
Allergy Asthma Proc 2000; 21: 107–111.]
*Mycoplasma pneumoniaeもしくはChlamydia pneumoniaeのserological or PCR evidenceがある患者に対しての検討;
1.BLACKら [Am J Respir Crit Care Med 2001; 164: 536–541.]
C. pneumoniaeの血清学的な診断をされた232人の喘息患者に対して、
6週間のroxithromycinとplaceboを比較
→primary end-pointsである朝の平均PEFと症状scoreに差ナシ
6週間後の夕方のPEFはマクロライド群で良好だったが、さらにその後6週間のfollow-upでは差ナシ
2.KRAFTら [Chest 2002; 121: 1782–1788.]
BAL液でM.pneumoniae or C.pneumoniaeのPCR陽性であった喘息患者は、陰性であった患者と比較し、マクロライド投与後のFEV1が著明に改善した
→この2つの研究結果の差は、M.pneumoniae or C.pneumoniaeの感染症診断のgold standardがないことによると思われる
*特にBLACKらの研究では血清診断のみなので、慢性感染なのか既感染なのか分からない
*KRAFTらはPCRを用いているので、本当に感染している人を選別できていると思われる
*また、吸入ステロイドを使用したかどうかの違いもある→KRAFTでは30%、BLACKでは75%
*気道過敏性改善効果についての報告
1.最初のstudy
17例のallergy-induced asthmaで、血液と各痰の好酸球が減少し、クラリスロマイシンの抗炎症効果が示唆された[Ann Allergy Asthma Immunol 2000; 84: 594–598.]
経口もしくは吸入ステロイド使用中の患者はは除外
2.800mg/日のbudesonideを吸入中の患者での臨床試験
血清のfree cortisol levelsは、clarithromycinで変化ナシ。
→ステロイド代謝への影響ではないのでは?[Eur Respir J 2004; 23: 714–717.]
3.erythromycin、roxithromycin、azithromycinでも、気道過敏性改善が認められたという報告あり
[Chest 1991; 99: 670–673., Chest 1994; 106: 458–461.,
J Asthma 2002; 39: 181–185.]
4.気道過敏性改善しなかったが、良かったという報告
SIMPSON et al. [Am J Respir Crit Care Med 2008; 177: 148–155.];
難治性喘息患者において、マクロライド投与によりQOLの改善と喘鳴の減少
⇔気道過敏性とFEV1では改善ナシ
QOLの改善は、喀痰中の好中球数・IL-8・好中球エラスターゼの値と相関していた
→non-eosinophilic asthmaticsにおいて、これらの現象が著明であった
*対象患者数が少なく、期間が短い(12週)ため、すべての患者に当てはまるとはいえない
・・・それで結局・・・
・Cochrane review of RICHELDI et al.
「chronic asthmaに対するマクロライドのevidenceは不十分」とされた
[Cochrane Database Syst Rev 2005; Issue, 4: CD002997.]
*その後、ケトライドの話が出てくる
・JOHNSTON et al. [N Engl J Med 2006; 354: 1589–1600.]
ketolideであるtelithromycinの、喘息増悪に対する効果を検討
double-blind placebo-controlled study
278の成人症例を対象⇒telithromycinもしくはプラセボ10 days
→primary outcomes:喘息症状、自宅で測定するPEF
→治療群において、喘息症状が有意に改善(p=0.004)
自宅測定PEFは有意差なし
symptom-free daysは増加 (16 versus 8%; p=0.006)
治療終了時の呼吸機能検査(FEV1, PEF, FVC and FEF25-75)は、治療群で改善
⇔6週後のフォローでは有意差なし.
*C. pneumoniaeもしくはM. pneumoniae感染が61%で認められた
→telithromycinへの反応性とは関連がなかった
*Nauseaがtelithromycinの副作用として多かった(p=0.01)
その他、肝酵素上昇が2名
⇒ketolideも良いかもしれない
C. pneumoniaeやM. pneumoniaeの感染率が高かったことから、
抗菌効果も機序として予測される
・・・やはり質の高いエビデンスが不十分という結果。
ですが、どの疾患においても少し光が見えるような研究結果が得られています。
そして、そのほとんどが海外のデータです。
「日本でだけ行われている有害な治療法」らしいのですが、その日本からの報告は少ないというのも、興味深いですね。ただ臨床研究が苦手なだけか・・・?
次回以降では、移植後閉塞性細気管支炎への投与について、そしてディスカッションへ。