2008年 10月 29日 ( 1 )

呼気NOの使い道がこんなところにもあったとは。
肝肺症候群については過去のお勉強ノートにちゃんと書いていたのに・・・すっかり忘れていた。

Alveolar Exhaled Nitric Oxide is Elevated in Hereditary Hemorrhagic Telangiectasia
Lung. 2008 Oct 24. [Epub ahead of print] (カナダ)

Background
・肝肺症候群では、肺の微小血管が拡張しており、肺内シャントを生じる。
→このような患者では、呼気NOが高い事が分かっている
→肺胞毛細血管のNO産生上昇による
・肺胞毛細血管のNO過剰産生が、遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT、30-45%に肺動静脈奇形が認められる)において、同様の機序でシャント生成に関与していると予想。

Prupose
・HHT患者において、呼気NOが高いことを確認する。

Materials and Methods
・HHTの診断基準を満たした患者58例と、非喫煙の正常コントロール49例について検討

Results
HHT患者のプロフィール
・遺伝子検査の結果
endoglin mutation:23/54 (42.6%)
activin receptor-like kinase-1 (ALK-1) mutation:17/54 (31.5%)
SMAD4 mutation:3/54 (5.6%)
no mutations:11/54 (20.4%)
・29/58例が過去に明らかな肺のAVM指摘

呼気NOの結果
・呼気NO(200 ml/s expiratory flow rate)を計測
HHT:58例 12±3.5 ppb
非喫煙者の正常コントロール:49例 10.5±3.2 ppb
→有意差あり(p=0.02)

*HHT内での肺AVM(+)と(-)の比較では有意差なし
*多血症を伴いやすい疾患だが、HbとNOの相関はなし

Conclusion
・HHTでは、肺毛細血管でのNO産生が増加しているのだろう。
→これが肺AVMの形成に関与しているかもしれない。


☆過去の勉強ノートから抜粋

①肺動静脈瘻(pulmonary AVM)
・HHTを見たら30%に肺AVM、肺AVMを見たら60-90%にHHT
・常染色体優性遺伝なので、家族のフォローも大切
・下葉、中葉、舌区に多い

「診断基準:Curacao criteria」
1.繰り返す鼻出血
2.皮膚や粘膜の毛細血管拡張(口唇、口腔、指、鼻)
3.肺、脳、肝臓、脊髄、消化管の動静脈奇形
4.家族歴…一親等以内にこの病気あり
→満たす項目:≧3つ:definite、2つ:probable、1つ:unlikely

・分類
単純型:80%。1本の肺動脈が、静脈性の拡張部(nidus)を介し、直接肺静脈につながる
複雑型:20%。複数の肺動脈が、nidusを介して、数本の肺静脈につながる

・合併症
脳梗塞・TIA、脳膿瘍→この辺の合併症のため、死亡率10%
喀血

・治療
径3mm以上ならコイル塞栓、10mm以上ならOpeも検討
その他、部位、個数なども考慮

肺AVM・HHTは、過去2例しか経験がありません(両方ともコイル塞栓)
素晴らしい日本語のサイトあり

http://web.mac.com/masakomiyama/Kodomo/welcome.html

②肝肺症候群
・診断基準
1.肝機能異常:肝硬変が最も多いが、必ずしも重症度と相関しない
2.肺内血管拡張:コントラスト心エコー、血流シンチなど
3.低酸素血症:A-aDO2>15-20mmHg。立位での低酸素血症の増悪、呼吸困難の増悪が見られる事が多い(orthodeoxia)
→3項目満たすと診断

・病態生理(Lancet 363:1461-1468, 2004)
[仮説1]
肝障害
→門脈圧上昇
→腸管血流の変化
→腸管内におけるグラム陰性菌やエンドトキシンのtranslocationの増加
→tumor necrosis factor-α(TNF-α)、heme oxygenase由来のCOおよびNOなどの産生増加
→毛細血管血管拡張に働く

[仮説2]
肝肺症候群の動物実験モデルにおいてエンドセリンB受容体の増加
→NO産生の増加
→肺内血管の拡張
*肝肺症候群患者の呼気中NO濃度は上昇しており、肝移植後に正常化した。また、呼気NO高値とA-aDO2の開大が、正の一次相関を示したとの報告あり (Hepatology 26:842-847, 1997)
*メチレンブルーでNOの生成を抑制したところ、患者のシャント量と低酸素血症が改善したとの報告あり

・予後
メイヨークリニックの22名の肝肺症候群患者の診断後平均2.5年間の観察期間で、死亡率は41%であった(Chest 104:515-521, 1993)

肝移植評価の為入院した111名の慢性肝疾患患者において、27名(24%)に肝肺症候群が見られ、肝肺症候群の平均余命は10.6ヶ月で、肝肺症候群なしの患者の40.8ヶ月より有意に短かったという報告あり(文献記載なし)

肝肺症候群の存在は、年齢、Child-Pugh分類、血中尿素窒素とともに予後規定の独立因子であり、死亡率は肝肺症候群の重症度に相関していた報告あり(文献記載なし)


・・・いずれも、遭遇する機会は少ない疾患ですが、普通に呼吸器の臨床をしていれば必ず出会う疾患でもあると思います。時々思い出さないと。
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