2008年 10月 24日 ( 2 )

「William “Willie” Sutton 」
 30 June, 1901~2 November, 1980
 ・アメリカの銀行強盗
 ・100以上の銀行を襲い、200万ドルを得た
 ・人生の半分以上を牢獄で過ごした(脱走もうまい)
 ・「なぜ銀行を襲うのか?」と聞かれると、「そこに金があるからさ」と答えていた
 ⇒この論理は、“Sutton's law”と呼ばれるようになった

・・・つまり、「有る所から取れ」ということです。

何の話かというと、Infectionのe-pub.にあった、「結核のIGRAs(Interferon-Gamma Release Assays)についてのレビュー」です。

Suttons's Law: Local Immunodiagnosis of Tuberculosis
Infection 2008 (published online) (ドイツ)

日本ではQFT-2Gしか承認されていませんが、海外ではQFT-3G、T-SPOTがあります。
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             *QFT-2Gでは、抗原はESAT-6とCFP-10のみ
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                   モダンメディア 2008;54(5):148より

いずれも標準的には末梢血液で検査を行うのですが、この論文は、「感染巣から採取した検体で行うべき」というもの。

はじめに
「結核のimmunodiagnosisの対象になるのは、大体2パターン」
①既感染の可能性(latently infected with Mycobacterium tuberculosis;LTBI)があり、化学予防を検討する時
②活動性結核の疑いがある時(臨床・画像上疑わしく、結核のrisk factorsがある人)
  →この場合は、スメア陰性だと診断が遅れる
   培養は数週間かかる上に、結核の23%は培養で診断がつかない
 [Report on the epidemiology of tuberculosis for 2005. Robert-Koch-Institute, Berlin, 2006.]

「immunodiagnosis:検査法」
・核酸PCR:感度86% スメア陰性例では感度低下
・tuberculin skin test (TST):BCG施行者、NTM感染者、免疫不全患者では特異度低下
・T cell interferon-γ release assays(TIGRA):末梢血単核球を抗原(ほとんどのNTMとBCGにはない抗原)と接触させ、IFNγの産生を定量的に測定する

TIRGAについて
・2種類ある
①全血を抗原に接触させた後、ELISAでINFγ測定
 (QuantiFERON TB-Gold In-Tube; Cellestis, Carnegie, Australia)
②ELISPOTにより、IFNγを産生している細胞数を測定する (日本では未採用)
 (T-Spot.TB; Oxford Immunotec, Abingdon, UK)

・TST vs TIRGA
 感度:TST 55%-74%, TIGRA 83%-97%
 特異度:TST 56%-98%, TIGRA 92%-100%
 [Ann Intern Med 2007; 146: 340-354., Am J Respir Crit Care Med 2006; 174: 736-742., Am J Respir Crit Care Med 2007; 175: 541-546]

・TIRGAの利点
 24時間以内に結果がわかる
 BCGに影響されない
 NTMとの交差反応が少ない
 免疫抑制状態の人でも、TSTより成績が良い 
[AIDS 2002; 16: 2285-2293., J Infect 2007; 54: e169-e174., Leukemia 2006; 20: 379-381., Ann Intern Med 2004; 140: 709-713., Eur Respir J 2008; 31: 1132-1135.]

・TIRGAの欠点
 active TB, LTBI, treated TBの区別ができない(もちろんTSTでも)

・・・ここから、このレビューの本編
TSTや末梢血のTIRGAでactive TB, LTBI, treated TBの区別ができないのは当然!!
←活動性結核の場合、感作単核球は感染局所にあり、末梢血にはほとんどいないから!!

「単核球を局所から取ってくるのは、技術的に可能」
・検体
 pleural effusion
 bronchoalveolar lavage (BAL) fluid
 cerebrospinal fluid (CSF)
 scites
 pericardial effusion
→これを調べるには、ELISA(QFT)よりもELISPOT(T-SPOT)のほうが優れている
 少量のIFNγしか産生されていなくても、その細胞数を見れるため

⇒ 様々な検討がなされ始めている!!
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                    *クリックで拡大

様々な検体でのT-SPOTの報告(上記Tableの中の、いくつかの論文の紹介)
①BAL
・BALに対するELISPOTは有効だった
 スメア陰性の結核疑い症例を対象とした結果、感度・特異度いずれも100% 
    [Am J Respir Crit Care Med 2006; 174: 1048-1054.]
 ⇔2005年のドイツでは、スメア陽性は40%、培養陽性は77%。
   →スメア陰性例において、喀痰もしくはBALのPCRの感度は48-80% 
    [Pneumologie 2004; 58: 160-164.]
・ERS2007で発表されたTuberculosis Network European Trials (TBNET) multicenter study
 結核患者でのELISPOT偽陰性:1/25
 非結核患者でのELISOPT偽陽性:11/70
 →感度 96%、特異度 84%
    [ERS Annual Congress 2007, Stockholm.]
・RAでMTXとステロイドを投与されている患者で培養陽性の結果が出る前に、BALのELISPOTで診断できたという報告あり  
    [Eur Respir J 2008; 31: 1132-1135.]

②胸水
・結核性胸膜炎は、2番目に多い肺外結核
 胸膜生検しないと診断がつかないことがある
 胸水PCRは感度30%、特異度100%(培養陰性なら30-60%)
    [Chest 2007; 131: 880-889., Chest 2001; 119: 1737-1741.]
・活動性結核性胸膜炎患者において、末梢血よりも胸水のほうが、ESAT-6特異的IFNγを産生するスポット形成細胞数(spot forming cells;SFC、IFNγを産生している単核球)が15倍多いことがわかっている。健常者ではほとんど見られない。 
    [Clin Infect Dis 2005; 40: 184-187.]
・prospective study
 培養で確定診断された結核10例
 結核疑い10例
 他疾患のコントロール21例
 ⇒に対し、胸水で採取された単核球に対しELISPOT施行
  →感度 95%、特異度 76%
    PCR陰性のケースでも診断できた
    [Eur Respir J 270;30:1173–1179.]
・クローン病で抗TNF-α製剤を含む免疫抑制剤を投与されている患者でも、ELISPOTでは陽性になったというケースレポートあり
    [Nat Clin Pract Rheumatol 2007; 3: 528–534.]


③脳脊髄液(CSF)
・結核性髄膜炎は致死的疾患
 →しかし、顕微鏡も培養も感度が低い 
    [Lancet Neurol 2005; 4: 160-170.]
・培養陽性の結核性髄膜炎の患者において、スメアもPCRも陰性だったが、ELISPOT陽性だったというケースレポートあり 
    [Infection 2008 (published online: January 12, 2008).]
・前向き試験で、CSFから得られた単核球を用いた結果、
 結核性髄膜炎9/10でELISPOT陽性⇔結核性髄膜炎以外ではすべて陰性  
    [Int J Tuberc Lung Dis 2008; 12: 1-7.]

④心嚢液
・Biglinoらの報告 
 結核性心膜炎症例において、PCR陰性⇔ELISPOT陽性の報告
    [Infection 2008 (published online: October 14, 2008).]

技術的な問題
・基準値が・・・
 現在は、「SFC/単核球数」と表示。しかし、これは検体によりばらつきが多い
 →「SFC/ある一定のリンパ球数」の単位で統一すべき
・活動性結核とLTBIの区別は、「SFCの局所/末梢血の比」を用いると良い
 →スメア陰性症例の場合、
  「SFC/リンパ球100万個」の比が、1以上なら活動性の局所感染あり、1以下ならなし  
    [Eur Respir J 2008; 31: 261-265.]

感想
長くなりました・・・。
とにかく、感染巣から結核菌を証明できない場合、そこから代わりに単核球を採取して、T-SPOTを行うのは有効な診断方法のようです。QFT-2Gについては、T-SPOTより感度が低くなるためか、このレビューには載っていませんでした。
某T京病院で働いている方、知っていることがあれば教えてください~
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約2年半前、福岡から東京に出るとき、
福岡のお師匠様達からVAIO(ノートパソコン)を買って頂きました。
その後かなり激しく使い込みまして、
とうとう昨日、帰らぬVAIOとなってしまいました。

意外と思い入れがあったことに気づき、結構しみじみしました。
本当にありがとうございました。
記念に、部屋に飾っておこうと思います。

後継機は、2008秋冬モデルが出たため型落ちとなった昨年モデルのレッツノートにしました。
値段が倍くらい違うのに、仕様にわずかな差しかありません。
消費社会、恐るべし。
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by tobbyK | 2008-10-24 19:52 | 徒然