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肺腫瘍のラジオ波

2週間くらい前に、肺腫瘍に対するラジオ波凝固療法(RFA)の講演を聴いて来ました。
関西ではメインに施行されている、大阪市立大学と岡山大学の放射線科の先生方から貴重なお話を聴かせて頂きました。いくつか質問もさせて頂き、とても勉強になりました。

長くなるので原理や手技等は論文や本をご参考ください。
今回は、気になっていたポイントについてメモしたものを。
肺腫瘍のラジオ波_c0177128_21471392.jpg
                              こんな感じ
【費用は?】
約30万円(含2泊3日の入院費、1回分)
・保険適用なし
・現時点では、厚生省に申請を出して通っている施設のみ、高度先進医療としての混合診療が認められるとのこと
 (*完全に自由診療でやっているクリニックもあるとのこと)

【適応は?】
「本来は手術適応だが、肺機能が悪い、並存症、転移性の肺病変が複数ある、など、何らかの理由で手術が難しい症例」が原則適応。
厳密な基準はなく、症例ごとに決めているのが現状。
*岡山大学と大阪市立大学の判断基準(あくまで原則とのこと)*
 ・何らかの理由で根治切除不能
 ・1-2.5cm。大きくても3cmまで
 ・2ヶ月以上の生存の見込み
 ・PaCO2>60 Torrはだめ
 ・HOT症例はだめ
 ・麻痺はだめ
 ・肺高血圧もだめ 
 ・ペースメーカーはだめ
 ・心臓・縦隔・5mm以上の太さの血管に接している腫瘍はだめ。1cm以上離れている。
 ・1度の治療では3箇所まで
 ・FEV1>1.0 L
 ・血小板>5万、INR<1.5

【効果判定法は?】
・CTで。
 治療後、腫瘍周囲に出血によるリング状のすりガラス状陰影が出現(hemorrhagic rim)
 ⇒空洞が出来る
 ⇒その後陰影は収縮していく
   完全治癒していれば、索状影のようになる⇔局所再発あり
・PETも有用かもしれない
 ウサギの検討では、治療直後に見るのがよさそう
 ⇒その後は炎症のためSUV↑
 ⇒8週間後にSUV↓

【成績は?】
局所制御率69%とのこと(1年間)
 ちなみに、Radiology 2007;243:268-275.では、
 3cm以下の腫瘍の局所制御率は以下のとおり
 ⇒83%(1年), 64%(2年), 57%(3年), 47%(4年), 47%(5年)

【合併症は?】
・横隔神経損傷
・空気塞栓
 焼いた時にエアが入る
 *RFA中に頚動脈エコーすると、空気が脳にとんでくのが見えるらしい(!!)
  →3-8μmのエアなので、脳塞栓は少ない
・熱い
・痛み:胸膜に近い腫瘍が痛い
    *岡山では、半数くらいで硬膜外麻酔をしているとのこと→きちんと手技を行うため
・気胸:20-30%
・血痰:10%くらい
・IP:気胸→IP急性増悪という例はあるらしい

*その他、大きい腫瘍に対しては、先にRFAを施行し、その後に放射線照射を行う併用治療もされていました。腫瘍はしっかり小さくなっていました!

「定位放射線照射との差はどう考える?」
「現在の適応は、少なくとも“局所の根治”を目指しているようだが、肺癌の場合は緩和も重要。そういう使用法は考えていないのか?」
など、いくつか質問させてもらいました。まだ始まったばかりなので、データをそろえていき、これから使用方法を色々考えていくような感じでした。

大変勉強になりました。
肺腫瘍のラジオ波_c0177128_21591930.jpg
                大阪の朝. かなり不定期な早朝ランニング・・・