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呼吸生理学の歴史 ~大昔~


歴史を知る事はとても大切だと思います。
勉強不足ですが・・・

「Nunn's Applied Respiratory Physiology」のCh.13 "The history of respiratory physiology"を時々読んでいますが、結構面白いです。


今回は、古代エジプト文明~古代ギリシャ文明までのメモを。

呼吸生理の歴史
・呼吸生理の歴史は長いが、発展・停滞・後退の時期あり。
・呼吸が生命にとって重要だと言うことは人類が生まれたときから分かっていたが、なぜそうなのかなかなか分からなかった。

古代文明(ancient civilisations)
1.古代エジプト
・古代エジプト文明はBC3100-BC332(ギリシャ・ローマ時代が始まるあたりまで)
・呼吸生理に関する記述がたくさんあったが、AD500頃より誰も字が読めなくなってしまった
 →19世紀の考古学者がコプト語(Coptic language)を用いて翻訳が出来るようになった
 →BC1820年頃の医学的記述が読めた(「Kahun papyrus」と呼ばれる)

・Medical papyri
 多くの書物(papyri)は、特定の症状に対する「レシピ」について記述
 最も長く、そして最も有名なのは「Ebers papyrus」である
 ⇒ これはBC1534のものであり、それ以前の多くの仕事の編纂。
   呼吸生理についても言及している!
   「空気は鼻から入り、心臓と肺に届く。そして全身に送られる」
   この書物には、「metu」というものについての記載が各セクションにあり、 
   「metu」は「湿気と空気」を全身に送る導管とされていた
  → 今で言うと「metu」は、おそらく血管のことだが、腱や筋肉、尿管なども含むと思われる

・2つの「metu」は耳にあるとされ、右耳からは生の息吹が入り、左肺からは死の吐息が入る、
 とされていた  → 医学の魔術的な側面あり

・古代エジプト人が死体の防腐処置を行っていた事を考えると、この原始的な解剖学的知見は驚きであった。実際、防腐処置はわずかな切開処置がなされていたが、その程度では内臓の解剖は分からなかっただろう。


2.古代ギリシャ
・ギリシャの物書きは哲学者であり、また医師でもあった
 → Hippocrates(BC460-377)が最初の医学校を創設

・Anaximenes(BC570-?)
 “pneuma”もしくはairが生命にとって重要であるとした。

・Alcmaeon
 「山羊は耳で呼吸をする。鼻から入る空気もあり、それは直接脳へ届く」

・ Empedocles(BC495-435)
 Anaximenesの記述の大部分に反論
 ⇒ 「呼吸は皮膚で行われ、心臓からの血流は潮のように波がある」
 → 生理学と哲学を結びつけた
   「"innate heat"は心臓にあり(魂と同じようなもの)、心臓により全身に送られる」
 → この説は古代ギリシャで広く受け入れられた(heat generation within the heart)
 → その後1000年間呼吸生理の中心説となった

・プラトン(BC427-347、学校はアカデメイア)、アリストテレス(BC384-322、アカデメイアの学生)、ヒポクラテス(BC460-377、学校はコス島に)の学校の書物は、呼吸についてのみならず、科学的な手法や考え方についても大量に記載されている。 
 → この後、哲学者-医師(philosopher-physician)は、生理学の研究において、
   より科学的な手法を取り入れるようになった。
   = 解剖が多く行われるようになった(人間、動物)

・プトレマイオス2世の支配するアレクサンドリアで解剖がよく行われた。
 → エジプト人には解剖禁止令があったが、ほとんどギリシャ人の支配下で行われた。
    その後動物の生体解剖が主流となったが、犯罪者の生体解剖も行われていた!
    (それに抗議する書物も残っている!)

・Herophilus(BC325あたり)
 動脈と静脈を区別し、アリストテレスと一緒に、ここに空気が入っている、と断言した

・Erasistratus(BC304-250)
 呼吸の研究に科学の原則を用いた
  空気は肺で取り込まれ、肺動脈により心臓に届けられるとした
  心臓で空気は「vital spirit」に変換され、動脈を通じて全身に送られる
  脳では、「vital spirit」を「animal spirit」に変換
  これは中空の神経を通って筋肉を動かす
 *心臓の一方向弁に気付いたが、心臓の働きの説明に用いる事が出来なかった
 → 彼以降、ギリシャの興味は哲学と身体の科学に移り、生理学の発達は400年間おあずけ




名前が難しいですが、読んでいると慣れてきます。
暇なときにだらだら読もうと思います。
そんな暇はない!という気もしますが・・・
by tobbyK | 2009-04-09 19:42 | 肺機能