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【JW】肺動脈径で肺高血圧の予測 in 肺線維症=ダメ

たいていの場合、CTで肺動脈が太いと、肺高血圧があると思っていました。
特に肺線維症ではよく見かけるんですが・・・
肺線維症の場合はあてにならんという話。

The Effect of Diffuse Pulmonary Fibrosis on the Reliability of CT Signs of Pulmonary Hypertension
Radiology 2008;249:1042-1049 (英国)


Background
・CTで計測した肺動脈の径は、肺動脈圧と相関する事が知られている
・肺線維症のある患者では肺高血圧症を合併する事が多い
・肺線維症のある患者においても、肺動脈の拡張は肺高血圧(PH)を示唆するか?

Materials and Methods
・右心カテーテル検査を施行した77例(39 men, 38 women)を対象
 ⇒2群に分類
   group A: 30 patients with pulmonary fibrosis
   group B: 47 without pulmonary fibrosis
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・計測項目:CTで計測
 肺動脈幹の径 (dPA)
 上行大動脈の径 (dAA)
 肺の線維化病変の広がり
 ⇒dPA、dPA/dAA ratioと、
   mean PA pressure(mPAP)、pulmonary vascular resistance index(PVRi)
   の相関を見た(Spearman rank correlation test)
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・また、dPAと肺の線維化病変の広がりやtotal lung capacity (TLC)との相関を、重回帰分析で検討した

Results
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group A:肺線維化のある患者群
no significant correlations
 dPAとmPAP; r = 0.23, P = 0.22
 dPAとPVRi; r = 0.23, P < 0.28

 dPA/dAA ratioとmPAP; r = 0.54, P < 0.005
 dPA/dAA ratioとPVRi; r = 0.48, P = 0.04

 ⇒ group Aでは、明らかなPHがなくても肺動脈の拡張が生じ、
    CT fibrosis scoreやTLCとdPAは相関しなかった


group B:肺線維化のない患者群
strong correlation
 dPAとmPAP; r = 0.67, P < 0.0001
 dPAとPVRi; r = 0.78, P < 0.0001

 dPA/dAA ratioとmPAP; r = 0.72, P < 0.0001
 dPA/dAA ratioとPVRi; r = 0.71, P < 0.0001

 ⇒ group Bでは、従来の報告どおり、肺動脈幹の径は肺高血圧の推測に有用
    (教科書的には35mmがカットオフ値)

Conclusion
・肺線維症の患者において、肺高血圧がなくても肺動脈の拡張が生じていた。
・それゆえに、肺動脈幹の径で肺高血圧を予測できない
 ⇔上行大動脈と肺動脈幹の比を用いると、少しは良い


線維化によるtractionにより、肺動脈が拡張すると言う仮説があるそうです。
でも、これでは説明がつかない部分が多いですね。(大動脈は?)
CTでの肺動脈幹の径は当てになるものとばかり思っていましたが、病態ごとに分けて考えるべきだったんですね。勉強になりました。
他の疾患でも見てみようと思います。