喘息発作へのモンテルカスト上乗せ効果について。


Oral montelukast in acute asthma exacerbations: a randomised, double-blind, placebo-controlled trial
Thorax 2011;66:7-11
 
英国のNorfolk & Norwich University Hospitalより

Background
ロイコトリエン拮抗薬は喘息のコントローラーとしてはエビデンスがあるが、急性期における効果は明らかではない。

Methods
対象:入院必要な87例の成人
    ⇒無作為に、montelukast群とplacebo群に分類
介入:夕方にmontelukast 10mg服用×4週間(退院後も服用すると言う事)
    全症例呼吸器科医にコンサルトの上入院
    BTSのガイドラインに基づいたfull careを受ける

primary end point:入院翌朝のPEF(気管支拡張薬使用後)の差

Results
73例で検討できた
入院時:montelukast群(n=37)…227.6±656.9 l/min (47.6% predicted)
     placebo群(n=36)…240.3±699.8 l/min (49.6% predicted)
  ↓
入院翌朝:montelukast群…389.6±6109.7 l/min (81.4% predicted)
      placebo群…332.3±6124.9 l/min (69.8% predicted)
       (p=0.046)

群間のPEFの平均差は57.4 l/min (95% CI of 1.15 to 113.6 l/min or 1.95-21.2% predicted)

Conclusion
喘息発作での入院後、経口montelukast追加は翌朝のPEFを改善させる



 追試してみたいです。
[PR]
Thorax 2010;65:21–26で報告された、慢性呼吸器疾患患者における新しい息切れスケールの「D-12」は、他の質問法と比較して簡便な方法。

「D-12」 
以下の項目について、None/Mild/Moderate/Severeで回答。各0-3点にあてはまる。
 1. My breath does not go in all the way
 2. My breathing requires more work
 3. I feel short of breath
 4. I have difficulty catching my breath
 5. I cannot get enough air
 6. My breathing is uncomfortable
 7. My breathing is exhausting
 8. My breathing makes me feel depressed
 9. My breathing makes me feel miserable
 10. My breathing is distressing
 11. My breathing makes me agitated
 12. My breathing is irritating



その妥当性について間質性肺疾患患者のみで検討した報告。

Dyspnea-12 Is a Valid and Reliable Measure of Breathlessness in Patients With Interstitial Lung Disease
CHEST 2011; 139(1):159–164


Objective
間質性肺疾患におけるDyspnea-12 questionnaire (D-12)の妥当性を検討

Methods
対象:101例のILD症例
方法:以下の質問法を行う
 ・ベースラインでは101例が回答    
  D-12 (scale range, 0-36, with a high score indicating worse dyspnea)
  Medical Research Council (MRC) dyspnea scale
  St. George Respiratory Questionnaire (SGRQ)
  Hospital Anxiety and Depression Scale (HADS)

 ・2週間後のフォローでは84例が回答
  D-12
  global health transition score

 ⇒ D-12の心理測定的特性について検討;
      天井効果とフロアー効果
      内的一貫性
      再現性
      構成概念妥当性

Results
内的一貫性:高い。Cronbach α=0.93。
再現性:高い。intraclass correlation coefficient=0.94。

D-12と他のスコアの相関;
 MRC grade・・・r=0.59; P<0.001
 SGRQ・・・symptoms, r=0.57
        activities, r=0.78
        impacts, r=0.75
        total, r=0.79; P<0.001

因子分析の結果、THORAXで報告されたD-12の「構造」がこの患者群でも確認された

Conclusion
間質性肺疾患の患者において、D-12は信頼性が高い質問法である。



慢性の間質性肺疾患では、病勢や治療効果の評価が微妙で難しい場合も多いので、新しい評価法が出るのは良いと思います。しかし、この論文によると、生理学的な指標(FVC%、DLCO%、6MWD)と最も単相関が良好だったのはMRCでした・・・うーん。
[PR]

あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いいたします。


今年は「放浪⇒定住(期間未定)」を予定している、自分にとっては初めての年となります。
これまでは毎年「次はどこに行こうかなぁ」ばかり考えていたもので・・・
いまだに放浪大好きなのですが、「定住」も初めての試みなので非常に楽しみです。
「1-2年で転勤」では、出来ない事もたくさんありますから。
また新しい出会いもあるでしょう。それも楽しみです。

今年最初のイベントとして、つい先日結婚式参加のため福岡に行きました。
前日に博多に入って、一人で夜中に中州で飲んでラーメン食べて、幸せでした。
結婚式・披露宴も素晴らしかったですし、色々な人に会えて楽しかったです。
しかし、披露宴の「花嫁から両親への手紙」の場面では、
毎回自分と娘(まだ4歳と1歳)に照らし合わせてしまい、
涙目になってしまいます・・・気が早い。


さて、中洲ではこの本片手に飲んでました。

「はじめての現象学」
竹田 青嗣 (著)


さらっと理解するのが難しいところもあり、そういうところは飛ばして流し読みしました。きちんと理解できたとはいえませんが、興味は湧きました。なんかこう、数式で説明できそうな感じが面白かったです。数学と哲学の関係はどうなっているのでしょうねぇ・・・


今年も楽しみたいと思います。
ジャーナルウォッチもきちんとやっていますので、
今年はどんどんアップして行きたいと思います。
[PR]
# by tobbyK | 2011-01-13 05:16 | 徒然
本日は神奈川県の某呼吸器センターで開かれた研究会に参加させていただき、終了後に勤務先の病院へちょっと寄って先ほど帰宅しました。

数年前に一緒に働いていた当時研修医の先生が、本日は大きな会で立派に英語でプレゼンしており、時が過ぎる速さをしみじみ感じました。。。

研究会は非常~に勉強になりました。日常臨床の疑問がいくつか解け、また新たな疑問やアイデアが湧きました。早速アイデア帳に書き込み、今後のスタディデザインを考えながら皆さんの発表を伺っていました。

しかし神奈川って良い所ですね。電車からの風景を眺めたのと少し歩いただけですが、風情を感じました。風の香りも海が近いせいか、埼玉県と違います。いつか住んでみたいです。

・・・そんな気になったのもつかの間、帰りの電車内は忘年会帰りの多数のサラリーマンから発散される酒とタバコと汗の匂いで、こちらも一気に疲れが出てしまいました。世のお父さんたちは一生懸命働いてるんだな・・・とは思うのですが、床に座り込んで嘔吐する人までいてなかなかカオスでした。

そんな中読んだ本を。

「心理学で何がわかるか」 (ちくま新書)
 村上 宣寛 (著)


満員電車で読むのは正直ちょっと疲れました。

医学論文でよく用いられる研究手法で検討された心理学の研究報告を多数まとめて紹介している、といった内容でした。それによって、過去の言い伝え(長男と次男の性格の違い、子育て問題などなど・・・)を解説してあり、それなりに面白いと思いました。「"ホーソン効果"に科学的な価値がない」なんていうのは特に。

でも結局、自分があまり心理学に興味がない事がわかってしまいました・・・読んでいて「へー」とか「ほー」以上の感想がなく、文章にもひきつけられずで・・・もうこの辺の本はしばらく読まないと思います。
[PR]
# by tobbyK | 2010-12-18 00:04 | 徒然
以前ご質問を頂いた事項ですが、ようやくまとめと製薬会社からの返答を頂きましたので、記事としてアップします。

COPDに対するPDE4阻害薬について。


1.Phosphodiesterase(PDE)とは

・cyclic nucleotide(adenylyl cyclaseやguanylyl cyclaseにより細胞内で産生されるcyclic AMP;cAMPやcyclic GMP;cGMP)を分解する酵素。

・cAMPやcGMPは気道平滑筋の弛緩や気道炎症の抑制作用を持つため、PDEを阻害する事でこれらが細胞内で増加し、気管支拡張効果や気道・肺の炎症抑制効果をもたらす事が期待される。

・COPDではテオフィリンが古くから使用されているが、その作用機序の一つとして非特異的なPDE抑制作用(特に3,4,5に対する阻害作用)がある。しかし通常の臨床用量では少ない。

・PDEには11のアイソザイムが存在し、COPDにはPDE4が主に関与している  
 *PDEアイソザイムの局在
  気道平滑筋 ・・・PDE 3, 4, 5    
  血管平滑筋 ・・・PDE 3, 5
  好酸球    ・・・PDE 4
  好中球    ・・・PDE 4
  血小板    ・・・PDE 3, 5
  T cell     ・・・PDE 4
  内皮細胞   ・・・PDE 3, 4
  知覚神経細胞・・・PDE 4
  気道上皮細胞・・・PDE 4
  肥満細胞   ・・・PDE 4
  マクロファージ・・・PDE 3, 4

・PDE4にはさらにA,B,C,Dの4つのサブタイプがあり、異なった役割を果たす。
   (Curr Opin Cell Biol 2000;12:174-179, Eur Respir J 1995;8:457-462)



2.PDE4阻害薬のCOPDに対する使用

cilomilast
 第一世代の薬剤
 実際の使用報告は以下のとおり;

 Lancet 2001;358:265-270
 対象:424例の中等症~重症のCOPD
 介入:6週間使用(他の治療薬は継続)
    cilomilast 5mg×2/day 109例
    cilomilast 10mg×2/day 102例
    cilomilast 15mg×2/day 107例
    プラセボ        106例
 primary outcome:気管支拡張薬使用前後の一秒量
 結果:cilomilast 15mg×2/dayの群において、
     6週後一秒量がベースラインより130ml改善(⇔プラセボでは-30ml)

 AJRCCM 2003;168:976-982 
 気管支生検での炎症細胞の減少を報告

 嘔気・嘔吐などの副作用が強かった⇒PDE4Dに対する阻害作用が強いため
 ⇒理想はPDE4B選択的に阻害する薬剤

・roflumilast 
 第二世代
 PDEサブタイプの選択性が低い
 実際の使用報告は以下のとおり;

 Thorax 2007;62:1081-1087
 対象:38例のCOPD患者
 介入:roflumilast 500μg/dayを4週間投与
 primary outcome:2週目と4週目の喀痰中炎症細胞・サイトカイン、気管支拡張薬後の一秒量
 結果:好中球数が35.5%と好酸球数が50%減少
    喀痰中のIL-8、好中球エラスターゼ、ECP、α2マクログロブリンも減少
    気管支拡張薬使用後の一秒量は68.7ml改善

 Lancet 2005;366:563-571
 対象:1411例のCOPD患者
 介入:roflumilast 250μg/day 576例
     roflumilast 500μg/day 555例
     プラセボ 280例
     24週間使用
 primary outcome:気管支拡張薬使用後の一秒量、健康関連QOL
 結果:一秒率は、プラセボと比較し250μg/dayで74ml増加、500μg/dayで97ml増加
    健康関連QOLは250μg/dayで-3.4ポイント
               500μg/dayで-3.5ポイント
               プラセボで-1.8ポイント 
 
    急性増悪回数は250μg/dayで1.03回
               500μg/dayで0.75回
               プラセボで1.13回  

 AJRCCM 2007;176:154-161
 対象:1513例のCOPD
 介入:roflumilast 500μg/day 760例
     プラセボ 753例
     1年間投与 無作為比較試験
 primary outcome:気管支拡張薬使用後の一秒量、急性増悪発生率、SGRQ合計スコア
 結果:気管支拡張薬使用後の一秒量はプラセボと比較しroflumilast群で39ml増加(52週で)
     急性増悪発生率はプラセボ群 0.92回/patient/year
                 roflumilast群 0.86回/patient/year
                     (有意差なし)
      ⇒stage4のCOPDではプラセボ群 1.59回/patient/year
                     roflumilast群 1.01回/patient/year

                     (有意差あり、36%の減少)
     SGRQスコアは両群で有意差なし
     roflumilastの副作用は下痢・嘔気・頭痛が多かったが、治療継続で問題なかった

 Lancet 2009;374:695-703
 対象:40歳以上の中等症~重症のCOPD
 介入:salmeterol(セレベント)+roflumilast 466例
     salmeterol(セレベント)+プラセボ  467例
     tiotropium(スピリーバ)+roflumilast 371例
     tiotropium(スピリーバ)+プラセボ  372例
 primary outcome:気管支拡張薬使用前の一秒量
 結果:salmeterolグループでは、
       roflumilast群で気管支拡張薬使用前の一秒量がプラセボより49ml増加
     tiotropiumグループでは、
       roflumilast群で気管支拡張薬使用前の一秒量がプラセボより80ml増加

 Lancet 2009;374:685-694
 対象:40歳以上の重症COPDで、気道症状、急性増悪歴がある症例
 介入:長時間作用方β2刺激薬+roflumilast 1537例
    長時間作用方β2刺激薬+プラセボ  1554例
    2つの多施設共同無作為比較試験
 primary outcome:気管支拡張薬使用前の一秒量、急性増悪発生率
 結果:roflumilast群でプラセボと比較し気管支拡張薬前の一秒率量が48ml増加
     中等症(ステロイド薬使用必要)以上の急性増悪回数が17%減少
        ・・・プラセボ群 1.37回/patient/year
          roflumilast群 1.14回/patient/year 
(有意差あり)
     嘔気、下痢、体重減少、頭痛などの副作用による試験中止例あり(14%くらい)


 日本では5-6年前にPhase2-3の試験が終了しています。たしか吸入ステロイドとの比較試験だったと記憶しています。治療成績の解析作業は現在製薬会社主導で行われているそうで、日本でもいずれは発売したい意向とのことでした。米国で今年承認されなかったのですが、来年に結論を持ち越しており首の皮一枚つながっているとのことでした。
 これまでの治療への上乗せ効果はありそうなので、期待したいところです。
[PR]
# by tobbyK | 2010-12-10 15:44 | COPD