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数年前に自分が担当していた、肺癌の、いわゆる末期の患者さんに、
「メモ帳をいつも持ち歩いて、思いついた事は必ず書き留めておきなさい。大きな財産になるから」
と、アドバイスを頂いた事がありました。

それ以来書き溜めておいたアイデア帳を久しぶりに見直してみたら、
正にこれからの自分の道標になっていました。

ただただ感謝、です。

貯まっていたたくさんのアイデアは本当に多方面に渡っていて、
飽きっぽい自分らしいな・・・と苦笑。
まあ、自分は「呼吸器内科」という以上の専門化はしたくないので、
それで良いと思っています。
全ての実現は大変だと思いますが、今は楽しみの方が勝っています。

まずは目の前の仕事の山を片付けなければ・・・

しかし、必ずこういう出会いがあるから、臨床はやめられないなぁと思います。



さて、この週末より、遅ればせながらビリー隊長のブートキャンプに入隊するつもりです。
除隊にならないように、気合を入れようと思います。
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by tobbyK | 2009-06-26 19:53 | 徒然

タイトルの治療法についてご質問を頂きました。
昨年レビュー(Proc Am Thorac Soc Vol 5. pp 454–460, 2008)を読んで
軽くまとめていたので、それを回答とさせて頂きます。

COPDに対する肺容量減少手術(Lung volume reduction surgery: LVRS)は、
一時期と比べ下火になっています。
が、症例によってはなかなか捨てがたい効果があるのも事実のようです。

さて、Bronchoscopic lung volume reduction (BLVR)とは、
気管支鏡を用いた肺の過膨脹を縮小させる手技全般を指します。
LVRSで得られた知見から、より侵襲を少なく、と言う事で、
気管支鏡を用いたこの方法が考案されました。

現時点では、BLVRに関する無作為比較試験の結果は出ておらず、
open-labelの少人数・短期間試験の結果しか得られていません。
(2008年秋頃の話ですが・・・出てたらすみません)
まだ、臨床で広く用いられるにはいたっていません。

現在、BLVRには3つの方法が考案されています。

①Endobronchial Valves
 ・一方向弁を気管支に挿入し、その先の肺を虚脱させる
 ・2つの弁についてトライアルが進行中
  *LVRSで得られた知見から、上葉優位型の肺気腫が対象となっています

 1.Emphasys Medical (Redwood City, CA)が開発した弁
  Emphasys Bronchial Valve for Emphysema Palliation Trial (VENT) trial
    ・・・他施設、open-label、無作為比較試験(内科治療 vs 一方向弁)
      100例以上検討している
      現在解析中(Rev Mal Respir 2004;21(6 Pt 1):1144–1152.)

 2.Spiration Incorporated (Redmond, WA)が開発した弁
    ・・・40例以上検討している(J Thorac Cardiovasc Surg 2007;133:65–73)
      現在、多施設無作為比較試験開始

②Airway Bypass system
 ・Macklemら、Joel Cooperの報告に基づく方法
  (Ann Thorac Surg 2003;75:393–397.、Proc Am Thorac Soc 2006;167:A726.)
 ・気道を狭窄させ肺を虚脱させるのではなく、気道と肺にバイパスを作り、
  気流を変更することで過膨脹を改善させる、という理論
 ・Broncus Incorporated (Mountain View, CA)が開発
  radiofrequency balloon catheterを用い、過膨脹肺と中枢気道を交通させる「fenestration」
   →肺のrecoil(弾性収縮力)を変えることなく、過膨脹肺を虚脱させる
  この方法は、気腫偏在型でも、びまん性気腫も理論的には有効のはず
   →びまん性気腫でトライアル進行中
 ・実際の方法
  まず、EBUSで血管がないか検討
  →カテーテルでアブレーションを行い、気道と肺に交通を作る
  →最後に、薬剤溶出性ステントを挿入し、穴の再閉塞を防ぐ
 ・これまで、19例の検討があるとの事
  →今後、無作為比較試験が始まるらしい

 *Am J Respir Crit Care Med Vol 178. pp 902–905, 2008に、
   この方法のメカニズムの検討論文あり。写真が面白かったです。

③Biological Remodeling
 ・気腫が偏在している症例に対して、一方向弁と同じ要領で肺を虚脱させるのが目的
  ⇔しかし、気道ではなく、肺胞で薬剤が作用し、生じる無気肺は不可逆性である
 ・Aeris Therapeutics (Woburn, MA)が開発
   (Am J Respir Crit Care Med 2003;167:771–778.)
 ・気管支鏡から、液状の癒着物質を注入
  →数週間かけリモデリングを完成させ、肺を虚脱させる
 ・これまで15例で施行 (Chest 2005;180:A230.)
  →現在、phase-2 trialへ


これらの方法の効果については、過去の論文の結果からは、
LVRSには及ばないなぁという印象です。
今後の発展に期待です。





ところで、yahooで宣伝されてる「聴くだけでしゃべる事が出来るようになる」という
英語教材に手を出すか出すまいか・・・悩み中。

以前「速聴」で失敗したしなぁ・・・


-追記-

質問に対する回答としては、内容がちょっと専門的過ぎますし、
効果についてあまり言及していませんでした。
ちょっとだけ追加します。

①Endobronchial Valves=気管内弁
 気管支に、一つの方向にしか流れない弁を挿入し、過剰に膨らんでいる肺をしぼませる方法

②Airway Bypass system=気道のバイパス
 膨らんでいる肺と、その近くの太い気管支に穴をあけ、ステントでつなぐ方法
 過剰に膨らんでいる肺から、空気が漏れ出る

③Biological Remodeling=生物学的再構築
 気管支から液状のある物質を肺内に注入し、病変部をしぼませてしまうと言う方法


①~③とも、呼吸機能の改善はあまり大きくない模様ですが、
運動時の過膨脹は少なくとも改善し、労作時息切れも減少するようです。
どういう症例が良い適応なのか?、副作用は?、などについては、まだ良く分かりません。
実用にはもう少し時間がかかりそうです。
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by tobbyK | 2009-06-25 19:23 | COPD

自転車で転んで顔中を擦り剥いた子。
魚の目(「鶏眼」と言います)が出来た子。
手に鉛筆がかなり深く突き刺さって、芯がなかなか取れない子。
高校の定期健診。

半日の診療だけでも、色々な子供を診察します。
あれ、呼吸器疾患がいない・・・


さて、ご存知のとおり、臓器移植法改正案のA案が衆院で可決されました。
関係者の方々は、それぞれの立場で色々な思いがあると思います。

救急をしていた頃、様々な原因で脳に重い障害を受けた方々を担当したことがあり、
ご本人はもとより、ご家族の苦労も間近で見てきました。
それは本当に大変なものです。

しかし某新聞朝刊を読むと、衆院での投票の際、
笑ったり、ヤジを飛ばしたり、ちゃかしたりする議員、棄権する政党が・・・

・・・それで何かを書きたくなってしまった訳です。


いつか国内で小児の脳死移植が行われる時が来たら、
せめて静かに見守るようにして欲しいと思います。
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by tobbyK | 2009-06-19 17:50 | 徒然

やっと来ました。この論文。

Early Use of Polymyxin B Hemoperfusion in Abdominal Septic Shock
   JAMA. 2009;301(23):2445-2452

イタリアでの多施設RCT。
腹部重症感染症のため手術をした患者が対象。
術後早期のPolymyxin B Hemoperfusionの有効性を見たもの。

最も気になる28日後の死亡率は、
 polymyxin B group:32% (11/34 patients)
 conventional therapy group:53% (16/30 patients)
  ⇒ unadjusted hazard ratio [HR], 0.43; 95%CI, 0.20-0.94
    adjusted HR, 0.36; 95%CI, 0.16-0.80




敗血症性ショックに対して、
ショックから離脱困難なケースにこの治療を行った事が数回あり、
いずれのケースでも回路を回し始めたらすぐに劇的に血圧が上がって行きました。
「スゴイ!!」
と思ったものです。
もともとの疾患の重症度が高いためその後の救命率が高かったとは言えませんが、
この治療法に可能性を感じていました。

その後色々な感染症の専門家の先生方が、
この治療法をやたらと強く否定されるようになりました。
「否定の根拠は、肯定する根拠がないから」
と言うような話が多く、自分の実感と乖離があって、
「?」となっていました。


今回の報告が、イタリアからと言うのが少し気にはなりますが・・・
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第49回JRS総会に参加してきました。
初日の金曜日に発表があり、その後は毎日飲み会でした。


会場をウロウロしていて、
「あ、あの人だ!」、と思って
「おー、お久しぶりですー!」、と声をかけたら、
全然違う人だった・・・が、
なんとその人は僕が思っていた人とは別の知り合いでもあったため、
何とかセーフ。

記憶力が低下している上に、抑制もきかなくなっているのは、
やはり老化なのでしょうね。。。


なかなかお会いできない方々にたくさんお会いする事が出来て、
自分にとって色々な意味で有意義でした。

こういうところに来ると業績が全てのように見えてしまいますが、
地道な日々の診療の質を上げることが第一で、
そのために研究をする、というスタンスでいたいと、自分は再認識しました。


あとは、展示場で発見したガイド下穿刺が出来るポータブルエコーが結構安かったのに感動。
と言ってもウン百万円レベルですが。
以前からmyエコーがほしかったので、宝くじが当たったら買いたいと思います。


で、今回お会いした方々に一番多く言われたのが、
「最近ブログが更新されてない!」
でしたので、今帰りの新幹線で書いています。
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by tobbyK | 2009-06-14 13:45 | 徒然

久しぶりに、以前のスタイルで。


成人の肺炎予防に、肺炎球菌ワクチンは本当に効果があるのか?
これまで多くの患者さんに接種を勧めて来ましたが、
本当に予防できているのかどうか、ほぼ実感がありませんでした。
ワクチンというものは元々そういうものかもしれませんが・・・

カナダからのメタアナリシス。
なかなか残念な結果です。

Efficacy of pneumococcal vaccination in adults: a meta-analysis
CMAJ 2009;180(1):48-58

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ワクチンによる肺炎予防のエビデンスは乏しい(double-blind trialsのみで検討);
 ・presumptive pneumonia:RR 1.20, 95%CI 0.75-1.92
 ・all-cause pneumonia:1.19, 95%CI 0.95-1.49
 ・all-cause mortality:0.99, 95%CI 0.84-1.17

高齢者・もしくは慢性疾患を持つ成人に対する効果も乏しい
 ・presumptive pneumococcal pneumonia:RR 1.04, 95%CI 0.78-1.38
 ・all-cause pneumonia:RR 0.89, 95%CI 0.69-1.14
 ・all-cause mortality:RR 1.00, 95%CI 0.87-1.14
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今回の検討の対象となったtrialで用いられたワクチンの大半は12価以上で、
23価もかなり多く含まれているのですが、この結果でした。
質が高いとされる、double-blind trialほど結果が良くないのは分かりますが、
ここまでくると少し考え直さなければならないと思います。

トライアルごとに結果のばらつきが激しく、selection biasが大きいのでしょうか?
重症化しやすい血清型とワクチンが合っていないのでは?

一医師ではワクチンの効果は実感しにくいので、なかなか困ります。
また、自信を持って勧めることが難しくなった気がします。



-徒然-

先日ブログに書いた肘内障疑いの2歳の少年が、
その後の経過を教えにお母さんと一緒に来てくれました。
整復の次の日には、全く問題なく動くようになっていたそうで、
本人は元気そのもの。

「あ~良かった」と思って少年に笑顔で近寄った所・・・

「あの時と同じ先生や~!!びぇ~~~!!!」

と言って泣き出してしまいました。

とほほ・・・
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お題その4 「先生、どっち向きが良いですか?」の解答編です。
遅くなってすみません。
本業がなかなか進まないもので、しばらくブログから離れていました。


では、Nunn、Westなどの教科書を参考に解説します。

原則的には、どのような体位であれ、下側になっている肺の領域での換気量が多くなります。
 立位なら、下葉。
 背臥位なら、背側部分。
 腹臥位なら、腹側部分。
 側臥位なら、下になっている方の肺。
これは、重力と胸腔内圧が、肺の膨らみ方に与える影響のためです。
簡単に言うと、もともとつぶれている肺のほうが、吸気時の伸びシロが大きい、という感じでしょうか。
(*もちろん、正常肺に限った話です)

さらに側臥位の場合、腹部臓器の重みにより下側の横隔膜が上がり、
下側の肺を圧迫して縮めます。
反対に、上側の横隔膜は下がり、また胸郭が伸びて肋間も若干開くため、
上側の肺は広がります。
一見、広がった上側の肺の方がよく見えますが、広がっている肺は呼吸による動きが少なくなってしまい、換気量(=出入りする空気の量)としては、圧迫されて縮められている下側の肺の方が大きくなります。
そして換気量を増やすと、高炭酸ガス血症を改善する事が出来ます。

次に、肺の中での血流の問題です。
重力の影響のため、やはり下側になっている肺領域で血流が多くなります。
肺の部位による血流量の差は、先に述べたような部位による換気量の差よりも大きいといわれています。
で、酸素化の改善のためには、換気と血流の割合をちょうどよくする必要があります。

この患者さんの場合・・・
 左肺は動きが悪いので換気量は少ないが、血流は保たれている=無駄な血流が多い

そこで、換気を増やし、無駄な血流を減らすためには・・・
「正常な肺を下にするような側臥位を取ればよい」、ということになります。


いかがでしょうか?
現時点での私の理解ですので、間違いや知識不足があるかもしれませんので、
その際はご指摘いただけますと幸です。
また、これは理屈上の話で、現実は肺病変の状態によって変わってしまいます・・・
(予想と反対の結果になった経験もあります)

コメントでご指摘がありましたように、患者さんの状態が許せば、色々な体位を試してみるのが現実的かもしれません。。。




最近注文した本が、全部当たりだったので、紹介します。

「Asthma and COPD: Basic Mechanisms and Clinical Management」
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分厚くてお値段も高いですが、自分が知りたい内容が分かりやすくまとめてありました。
頑張って読みたいと思います。


「呼吸のバイオロジー なぜ呼吸は止められるか」
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面白い、の一言です。
「呼吸器科医」と名乗るためには、日常臨床に必要な知識はあくまで必要条件であり、
「肺とは?呼吸とは?」についても一度深く考えねばならんと思います。


「RUN」
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小学5年生の時に母親が自殺。
自分に宛てられた、たった3行の遺書。
その意味を問い続けながら海外で闘う日本人サッカー選手のドキュメントです。
家族って、何なのでしょうね。
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