今回も依頼原稿のための勉強。
Adenoid cystic carcnoma of the Trachea or Bronchusはじめに・最初の報告は、1859年にBillrothが行った
(Virchows Arch Patho Anat 1859;17:357-75.)
← おそらく"Master of Surgery"の
Theodor Billroth。
腹部だけでなく、喉頭摘出術もランドマークとなる方法を編み出していたのですね。
スゴイ・・・
・Adenoid cystic carcinoma(ACC)は、以前は“cylindroma”もしくは“adenocystic carcinoma”と呼ばれていた
・MDCTの発達により、迅速な検索とmultiplanar reconstructionによる多方向からの画像検討が容易となった
Clinical Findings・年齢:40歳代に多い
・性差:なし (J Thorac Imaging 1995;10:180–198)
・喫煙歴:関係ない (Radiology 1977;122:597–600)
・症状:気道の閉塞症状
→息切れ、咳、stridor、wheezing、血痰/喀血、胸痛、体重減少
*初期診断時に、喘息や気管支炎との鑑別が問題となる
症状出現から診断までの期間は数週間~1年以上
早期治療で予後が改善するので、早期発見が重要
(Chest Surg Clin N Am 1996;6:875–898)
・頻度:
気管腫瘍の発生率は100000対0.2人/年であり、癌による年間死亡数の0.1%以下
(J Thorac Cardiovasc Surg 1996;112:1522-32.)
気管原発の腫瘍は呼吸器系腫瘍の2%
(Cancer 1970;25:1448–1456)
成人の呼吸器系腫瘍では、良性よりも悪性腫瘍の方が多い(60–83%)
(J Thorac Cardiovasc Surg 1996;111:808–813)
気管腫瘍としては、扁平上皮癌(48%)に次いで頻度が高い(33%)
(Cancer 1990;66:894–899、Am J Surgery 1982;143:697-9)
・治療:切除・放射線照射・両者の併用があるが、治癒には完全切除が望まれる
(Am J Surgery 1982;143:697-9、
J Thorac Cardiovasc Surg 1996;111:808-14、
Thorax 1993;48:688-92、
Mayo Clin Proc 1993;68:680-4、
Cancer 1970;25:1448-56)
手術・・・気管切除・形成、内視鏡的切除(coring or using a laser)
Grillo and Marthisenは、気管切除・形成を推奨
→完全切除は当然だが、不完全切除でも合併症が少なく予後が改善
(Ann Thorac Surg 1990;49:67-77)
Maziakらは、不完全よりも完全切除の方が予後が良いことを報告
→10年生存率で30% vs. 69%
(J Thorac Cardiovasc Surg 1996;112:1522-32)
手術合併症:
手術死亡率:12% (range,5%-14%)
(Am J Surgery 1982;143:697-9、
International trends in general thoracic surgery:
major challenges. Vol2. Philadelphia: WB Saunders. 1987:91-110.、
Thoracic Oncology New York: Raven Press, 1983:271-8)
その他の合併症:ACCは局所浸潤傾向が強く、
周囲組織の広範な切除が必要となる事が多い
→気管食道瘻、咽頭/食道のリーク、
縫合不全、声帯麻痺、一時的な気管切開、
嚥下障害、イレウス、肺炎
(Am J Surgery 1982;143:697-9、
Thoracic Oncology New York: Raven Press, 1983:271-8)
放射線:
唾液腺のACCへの放射線照射は、局所コントロールは良いが、長期予後は改善しない
(J Thorac Cardiovasc Surg 1996;111:808-14、
Arch Otolaryngol Head Neck Surg 1994;120:721-6)
⇔ 気管のACCに対しては証明されていない
しかし気管切除を受け入れることができない患者も多く、放射線照射も選択枝
→多くのACCは放射線照射に対する感受性があり、
単独治療でも長期に生存した報告あり
術後放射線照射・・・効果は不明だが、理論的には有効ではないかと考えられる
化学療法・・・報告が少ないが、効果は乏しいと考えられている
(Am J Surg 1992;164:623-8)
・予後:
低悪性度腫瘍だが、転移すると予後は2年程度
5年生存率:66% to 100%
10年生存率:51% to 62% → これらは治療法によらない!
(J Thorac Cardiovasc Surg 1996;112:1522-32、
Am J Surgery 1982;143:697-9、
Arch Otolaryngol Head Neck Surg 1994;120:721-6)
Radiographic and Helical CT Findings・下部気管より発生する事が多く、次に主気管支・葉気管支・区域気管支(稀)・頸部気管(稀)
胸部単純レントゲン:
・分かりにくいことが多い
(Ann Thorac Surg 1987;43:276–278)
・気管・気管支内に整/不整/分葉状の突出
・気管外への進展が高度な場合、縦隔陰影が変化
(Can Assoc Radiol J 1993;44:157–167)
CT:
・軟部組織濃度の腫瘤
*粘膜下への進展傾向強い
・気管壁の全周性の肥厚
・気管を取り囲む均一な濃度の陰影で、気管壁の肥厚を伴うパターンも
(AJR 1986;146:1129–1132、
AJR 2001;177:1145–1150)
・横軸方向よりも縦軸方向への進展が強い
(J Thorac Imaging 1995;10:180–198)
・気管周囲180°以上を侵す場合が多い
・形はいろいろ・・・ポリープ状、広基性
・辺縁もいろいろ・・・整、不整、分葉状
・石灰化は稀
・気管の後外側部や前外側部からの発生が多い・・・軟骨と粘膜の結合部で、粘液栓が豊富な部位が原発と考えられている
(AJR 1986;146:1129–1132、
AJR 2001;177:1145–1150)
・頸部気管のACCは、甲状腺や気管軟骨に直接浸潤することがある
(Chest Surg Clin N Am 1996;6:875–898)
・遠隔転移が生じる・・・診断時に領域リンパ節転移がある確率は10%
(Ann Thorac Surg 1987;43:276–278)
頭頸部のACCでは、領域リンパ節転移があると10年生存率が落ちる
(Cancer 1970;25:1448-56.)
⇔ 気管のACCでは不明
・葉気管支・区域気管支原発の場合、無気肺やAir trappingが生じることあり
Pathologic Findings・マクロでは、辺縁整・境界明瞭
*外方への進展性が強く、辺縁が不整なこともある
*表面が潰瘍化していることもある
・均一で小さな細胞がシート状に並び、典型的な"cribriform growth pattern"もしくは腺管状のパターンをとることが多い
・嚢胞状部分が乏しく固形部分が多い場合は、局所での浸潤性が強く、粘膜下の神経周囲もしくはリンパ管に沿って進展していく傾向が強い
(Cancer 1970;25:1448-56)
CT–Pathologic Comparisons・Spizarnyらは、CTでは縦軸方向への進展や周囲臓器への進展が良く分からないと報告した
(AJR 1986;146:1129–1132)
→しかし、MDCTの出現とMPRが容易になったことで、この問題は解決されつつある
CTは術式の決定にも重要
(Eur J Radiol 2000;34:9–25)
-徒然-
明日から1週間シカゴです(北米放射線学会)。
去年と違って今回はイベントが盛り沢山なので、楽しみです。
またレポートします。
-追記-
「リアル 9巻」年に1冊の恒例行事。
今年も出ました。
井上雄彦氏の作品の中では、最高傑作だと思っています。