カテゴリ:COPD( 16 )

長らくご無沙汰いたしておりました。
ようやく再開のめどが立ちましたので、また時々日記代わりに書いていきたいと思います。

まず、残ってしまっていたこの話題から開始したいと思います。

アディポカインとは
  *小児科診療・2010年・2号 (59)223を主に参考にさせて頂きました。
・脂肪細胞から分泌されるホルモン、サイトカイン、ケモカイン、脂肪酸など、様々な液性生理活性物質を総括する概念。脂肪細胞のみに特異的に発現するという「狭義」のアディポカインに該当するものだけで50種類以上。
・その異常はメタボリックシンドロームの病態と深く関わる。
・アディポカインの量的・質的なバランスは糖脂質代謝制御に大きく関与。
・レプチンとアディポネクチンが主役。

○レプチン
1995年に発見された脂肪細胞由来のホルモン。
「脂肪細胞が脳と会話する!」と言われる。
 →末梢の栄養状態を視床下部の受容体に伝達し、食欲とエネルギー代謝の調節、
  下垂体ホルモンの調節や交感神経活動の制御など、多彩な役割。

特徴
・脂肪細胞が肥大化すると分泌量が増加=体脂肪量をアディポカインの中で最も鋭敏に反映する。
・女性に多い=同じBMIなら2倍。女性の方が脂肪量が多い、女性ホルモンによる分泌促進などが理由。
・肥満の場合は、視床下部レベルでレプチン抵抗性が生じる!
 →シグナル伝達経路が可逆的に障害されるらしい
・骨格筋における脂肪酸酸化作用亢進作用あり。代謝改善をもたらす。
・糖・脂質代謝活性化作用があり、今後糖尿病や肥満治療に応用が期待される。
・神経内分泌作用がもう一つの大事な作用。
 飢餓状態では分泌が減少し、甲状腺ホルモン、成長ホルモン、性ホルモンが分泌抑制
 ⇔副腎皮質ホルモンは分泌増加
 →進化の過程でレプチンの重要な役割はこれであったと考えられる。
  つまり、飢餓状態では余計なエネルギー消費を抑え、成長を抑え、種の保存もストップする。
  そしてCRF-ACTH-コルチゾール系を活性化して生き残りを目指す。

・月経との関連
 バレリーナやマラソンランナーなどで見られる月経異常で、レプチン補充すると改善する。
 海外では視床下部性無月経に対する治療薬として応用が進められている。
 小児期は、体脂肪量の増加に伴うレプチン濃度の上昇が一定の閾値を超えると初経が発来する。
 レプチン濃度の上昇は妊娠・出産・育児に必要なエネルギー備蓄が担保された事を脳に伝達する役割。

○アディポネクチン
「全身の炎症の炎を鎮火し、脂肪細胞がコマンドする全身の代謝調節因子」
メタボリックシンドロームのキー分子。

特徴
・濃度は古典的ホルモンの1000倍と濃い!!
・血中アディポネクチン濃度は古典的ホルモンの1000倍以上の高濃度であり,内臓脂肪量と逆相関する。
・レプチンと対照的に、肥満に伴い血中濃度が減少。内臓脂肪量と逆相関。
 ⇒女性よりも男性において顕著。
・女性より男性で有意に低値=男性ホルモンはアディポネクチン分泌抑制。
・低アディポネクチン血症をもたらすアディポネクチン遺伝子多型が数箇所同定されている。
・作用
 骨格筋や肝臓においてインスリン感受性を増強
 ⇒骨格筋における脂肪酸β酸化の亢進や肝臓における糖新生の抑制による
 血管壁において接着分子群の誘導抑制・マクロファージ泡沫化の抑制→動脈硬化の進展を防御
 ⇒血管壁への直接作用が主体であり、TNF-αやPAI-1
  (plasminogen activator inhibitor-1)の作用に拮抗して動脈硬化巣の炎症鎮静化

・低アディポネクチン血症は、インスリン抵抗性や心血管イベントと相関
・期待される臨床効果:
 脂肪肝炎の線維化抑制効果
 特定のがん発生抑制効果や腸炎の改善効果

・アディポネクチンはPPAR(peroxisome proliferator activated receptor)γの標的遺伝子
 ⇒PPARγアゴニスト(チアゾリン誘導体)により血中アディポネクチンが増加する
  →抗動脈硬化作用、抗炎症作用
 PPARγは脂肪組織の機能調節にかかわる重要な遺伝子群を協調的に制御
 PPARγリガンド抵抗性症候群(PLRS)という病態がある
  ⇒やせ形体系で高度の動脈硬化、強いインスリン抵抗性、部分性脂肪萎縮、高血圧、
    脂質代謝異常、脂肪肝、女性の場合は多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

COPDとアディポネクチン

・COPDでもBMIとアディポネクチン量は逆相関することが確かめられている
  (CHEST 2007;132:135-140
・マウスの肺気腫モデル(elastase-induced emphysema model)での実験 
  (AJRCCM 2011;183:1164–1175
 ⇒アディポネクチン欠損マウスでは、COPDと体重減少や骨粗鬆症に加え、
   全身性炎症(主に血管内皮障害による)を伴った
   →アディポネクチン投与により改善あり


COPD、特に気腫優位型は全身性炎症性疾患であり様々な合併症を併発することがわかっています。今後何らかの方法によるアディポネクチン補充もしくは上昇させる治療法が期待されます。
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by tobbyk | 2011-06-12 16:55 | COPD
以前ご質問を頂いた事項ですが、ようやくまとめと製薬会社からの返答を頂きましたので、記事としてアップします。

COPDに対するPDE4阻害薬について。


1.Phosphodiesterase(PDE)とは

・cyclic nucleotide(adenylyl cyclaseやguanylyl cyclaseにより細胞内で産生されるcyclic AMP;cAMPやcyclic GMP;cGMP)を分解する酵素。

・cAMPやcGMPは気道平滑筋の弛緩や気道炎症の抑制作用を持つため、PDEを阻害する事でこれらが細胞内で増加し、気管支拡張効果や気道・肺の炎症抑制効果をもたらす事が期待される。

・COPDではテオフィリンが古くから使用されているが、その作用機序の一つとして非特異的なPDE抑制作用(特に3,4,5に対する阻害作用)がある。しかし通常の臨床用量では少ない。

・PDEには11のアイソザイムが存在し、COPDにはPDE4が主に関与している  
 *PDEアイソザイムの局在
  気道平滑筋 ・・・PDE 3, 4, 5    
  血管平滑筋 ・・・PDE 3, 5
  好酸球    ・・・PDE 4
  好中球    ・・・PDE 4
  血小板    ・・・PDE 3, 5
  T cell     ・・・PDE 4
  内皮細胞   ・・・PDE 3, 4
  知覚神経細胞・・・PDE 4
  気道上皮細胞・・・PDE 4
  肥満細胞   ・・・PDE 4
  マクロファージ・・・PDE 3, 4

・PDE4にはさらにA,B,C,Dの4つのサブタイプがあり、異なった役割を果たす。
   (Curr Opin Cell Biol 2000;12:174-179, Eur Respir J 1995;8:457-462)



2.PDE4阻害薬のCOPDに対する使用

cilomilast
 第一世代の薬剤
 実際の使用報告は以下のとおり;

 Lancet 2001;358:265-270
 対象:424例の中等症~重症のCOPD
 介入:6週間使用(他の治療薬は継続)
    cilomilast 5mg×2/day 109例
    cilomilast 10mg×2/day 102例
    cilomilast 15mg×2/day 107例
    プラセボ        106例
 primary outcome:気管支拡張薬使用前後の一秒量
 結果:cilomilast 15mg×2/dayの群において、
     6週後一秒量がベースラインより130ml改善(⇔プラセボでは-30ml)

 AJRCCM 2003;168:976-982 
 気管支生検での炎症細胞の減少を報告

 嘔気・嘔吐などの副作用が強かった⇒PDE4Dに対する阻害作用が強いため
 ⇒理想はPDE4B選択的に阻害する薬剤

・roflumilast 
 第二世代
 PDEサブタイプの選択性が低い
 実際の使用報告は以下のとおり;

 Thorax 2007;62:1081-1087
 対象:38例のCOPD患者
 介入:roflumilast 500μg/dayを4週間投与
 primary outcome:2週目と4週目の喀痰中炎症細胞・サイトカイン、気管支拡張薬後の一秒量
 結果:好中球数が35.5%と好酸球数が50%減少
    喀痰中のIL-8、好中球エラスターゼ、ECP、α2マクログロブリンも減少
    気管支拡張薬使用後の一秒量は68.7ml改善

 Lancet 2005;366:563-571
 対象:1411例のCOPD患者
 介入:roflumilast 250μg/day 576例
     roflumilast 500μg/day 555例
     プラセボ 280例
     24週間使用
 primary outcome:気管支拡張薬使用後の一秒量、健康関連QOL
 結果:一秒率は、プラセボと比較し250μg/dayで74ml増加、500μg/dayで97ml増加
    健康関連QOLは250μg/dayで-3.4ポイント
               500μg/dayで-3.5ポイント
               プラセボで-1.8ポイント 
 
    急性増悪回数は250μg/dayで1.03回
               500μg/dayで0.75回
               プラセボで1.13回  

 AJRCCM 2007;176:154-161
 対象:1513例のCOPD
 介入:roflumilast 500μg/day 760例
     プラセボ 753例
     1年間投与 無作為比較試験
 primary outcome:気管支拡張薬使用後の一秒量、急性増悪発生率、SGRQ合計スコア
 結果:気管支拡張薬使用後の一秒量はプラセボと比較しroflumilast群で39ml増加(52週で)
     急性増悪発生率はプラセボ群 0.92回/patient/year
                 roflumilast群 0.86回/patient/year
                     (有意差なし)
      ⇒stage4のCOPDではプラセボ群 1.59回/patient/year
                     roflumilast群 1.01回/patient/year

                     (有意差あり、36%の減少)
     SGRQスコアは両群で有意差なし
     roflumilastの副作用は下痢・嘔気・頭痛が多かったが、治療継続で問題なかった

 Lancet 2009;374:695-703
 対象:40歳以上の中等症~重症のCOPD
 介入:salmeterol(セレベント)+roflumilast 466例
     salmeterol(セレベント)+プラセボ  467例
     tiotropium(スピリーバ)+roflumilast 371例
     tiotropium(スピリーバ)+プラセボ  372例
 primary outcome:気管支拡張薬使用前の一秒量
 結果:salmeterolグループでは、
       roflumilast群で気管支拡張薬使用前の一秒量がプラセボより49ml増加
     tiotropiumグループでは、
       roflumilast群で気管支拡張薬使用前の一秒量がプラセボより80ml増加

 Lancet 2009;374:685-694
 対象:40歳以上の重症COPDで、気道症状、急性増悪歴がある症例
 介入:長時間作用方β2刺激薬+roflumilast 1537例
    長時間作用方β2刺激薬+プラセボ  1554例
    2つの多施設共同無作為比較試験
 primary outcome:気管支拡張薬使用前の一秒量、急性増悪発生率
 結果:roflumilast群でプラセボと比較し気管支拡張薬前の一秒率量が48ml増加
     中等症(ステロイド薬使用必要)以上の急性増悪回数が17%減少
        ・・・プラセボ群 1.37回/patient/year
          roflumilast群 1.14回/patient/year 
(有意差あり)
     嘔気、下痢、体重減少、頭痛などの副作用による試験中止例あり(14%くらい)


 日本では5-6年前にPhase2-3の試験が終了しています。たしか吸入ステロイドとの比較試験だったと記憶しています。治療成績の解析作業は現在製薬会社主導で行われているそうで、日本でもいずれは発売したい意向とのことでした。米国で今年承認されなかったのですが、来年に結論を持ち越しており首の皮一枚つながっているとのことでした。
 これまでの治療への上乗せ効果はありそうなので、期待したいところです。
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by tobbyK | 2010-12-10 15:44 | COPD
お久しぶりです。
約1ヶ月も更新しなかったのに、いつもチェックして頂いてありがとうございます。
臨床漬けの日々にも慣れてきて、ようやく更新できる状況になりました。

以下、abstractのみ読んで気になった論文を。

Inhaled corticosteroid use is associated with lower mortality for subjects with chronic obstructive pulmonary disease and hospitalized with pneumonia
Eur Respir J 2010, doi:10.1183/09031936.00077509

COPD患者に対する吸入ステロイド療法は肺炎の罹患率を上昇させるという報告がなされていますが、その予後は不明でした。
この論文では米国の退役軍人病院に入院した64歳以上のCOPD+肺炎患者について検討し、吸入ステロイドが肺炎の予後に影響するのかどうかを検討しています。その結果として、肺炎による入院後の30日死亡率・90日死亡率いずれにおいても、吸入ステロイドは有意に死亡率を低下させる因子であったと報告しています。

あとで本文をきちんと読んで、対象患者の内訳を細かく調べてみようと思います。


-徒然-
新年度の1ヶ月で、本当にたくさんの方との出会いと、そして別れもありました。
どれも大切にしたいと思います。

本日は炎天下に娘と散歩中、亀に出会いました。
デカイ・・・
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by tobbyK | 2010-05-03 18:42 | COPD

Chest X-rays in COPD screening: Are they worthwhile?
Respiratory Medicine 2009;103(12):1862-1865 (UK)

Background
・BTS/NICE(National Institute for Health and Clinical Excellence)のCOPD guidelineでは、 COPDの初期評価のために胸部単純X線写真(以下胸Xp)を推奨している。推奨度はgrade Dであり、expert opinion程度である。
・胸XpでCOPD以外のどんな疾患が分かるのか?そして、それでその後のマネージメントが変わるか?

マテメソ
・対象:Dundee(スコットランドの北東部)の40歳以上の喫煙者で気管支拡張薬を投与されている患者(=COPDが疑われる症例)を対象
・過去3年以内に胸Xpの撮影歴が無い場合、practice nurseにより胸Xp撮影を指示
・retrospectiveに胸Xpとカルテを検討
・胸Xpのチェックポイントは7つあるが、以下の2点が重要なポイント:
 息切れを起こすCOPD以外の原因は?
 肺癌は?
 →上記2点がある場合、その後の取り扱いについても検討

Results
・546例について検討
 →14%で治療可能な疾患が指摘された
   胸Xp後の治療により、84%の症例が改善したと考えられる
   肺癌は11例で、stage1はその内3例だった

Conclusion
・COPD患者の初期評価に胸Xpを用いる事で、それなりに良性・悪性疾患が発見された
・発見された患者の大部分において、治療方針に何らかの変更があった
・このエビデンスに基づき、ガイドラインの推奨度をgrade Dからgrade Cに上げても良いのではないか?



こういうエビデンス、結構無いものですよね。
しかし、「当たり前だろう」って感じで受け取るのは良くないと思います。
当たり前だと思っている事が全くの間違いである事は、
非常に多いからです。
これは歴史が証明しています。


100年後の人類に役立つ研究をすることも大切でロマンを感じますが、
同じ時代を生きる人達にとって明日から役立つ研究の方が、
どちらかというと自分の好みです。



-徒然-

出張続きです。
現在、診療所外来で患者さんと話してリフレッシュ中。

妻から聞いた、週末出張中の長女(3歳)の一言
「(ベランダで遠くを見つめつつ)パパが消えちゃったら、私悲しい・・・」
 
おいおい・・・
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by tobbyK | 2009-11-16 10:41 | COPD

COPD急性増悪の起こりやすい季節になってきました。
増悪時のステロイド±抗生剤の自己治療の論文がちょうどありました。

The (cost)-effectiveness of self-treatment of exacerbations on the severity of exacerbations in COPD patients: the COPE-II study
Thorax. Published Online First: 6 September 2009. doi:10.1136/thx.2008.112243


Purpose
・COPD急性増悪の重症度に基づく自己治療(self-treatment on the severity)の費用対効果の検討

マテメソ
・142例のCOPD患者
・無作為に患者教育セッション(2時間を4回)に割付。
 このセッションは、急性増悪時の自己治療が含まれているものとそうでないものに分かれている。
 自己治療群では、プレドニゾロン±抗生剤の自己治療プランあり。

・1年間のフォローアップ期間中、毎日症状に関する日記をつける。
 →急性増悪の頻度とその期間、重症度スコアを計算。

Results
・自己治療群70例、対象群72例
・結果
 ・急性増悪の頻度・・・同等 (平均3.5±2.7回)
 ・急性増悪の期間・・・自己治療群で短い傾向 
     自己治療群の中央値:31日(interquartile range (IQR): 8.9-67.5)
     対象群の中央値:40日 (IQR: 13.3-88.2); p=0.064
 *全症例の90パーセンタイル値は137日であり、これ以上の患者を長増悪期間者とすると、
   これらの症例では両群に有意差アリ  p=0.028

 ・増悪期間中の平均重症度スコア・・・同等
 ・費用対効果・・・自己治療群で一人当たり154ユーロ削減できた
    *入院回数の差
      自己治療群で一人当たり0.2回/年
      対象群で一人当たり0.33回/年 ; p=0.388
    *受診率の差
      自己治療群で一人当たり5.37回/年
      対象群で一人当たり6.51回/年 ; p=0.043

Conclusion
・COPD急性増悪の自己治療は、増悪日数とコストを抑える。


こういうこと、日常臨床でやっているドクターは結構多いのではないでしょうか?
私も経験があります。
増悪を頻繁に繰り返す方に、
「これを渡しておくから、同じような症状が出たら早目に飲んでください」と。

感染症専門医からは何と言われるか・・・?
マクロライド長期投与と同じで乱用は避けなければなりませんので、
適応をよく検証すべきなのだと思います。
自分なりに検証してみたいと思います。
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by tobbyK | 2009-10-30 18:15 | COPD
以前ご質問を頂きましたので、NアセチルシステインのCOPDへの効果について、基本的事項と最近の報告をまとめてみました。
理解不十分なところがありますので、間違いがあればご指摘いただけますと幸いです。

【基本的事項】
・COPDの気道や肺胞の病変は、主に喫煙によりもたらされる
・喫煙そのものから、もしくは喫煙の刺激により気道上皮細胞や肺胞マクロファージ等からoxidant(酸化性物質)が分泌され、これが気管支や肺組織にダメージをもたらすことが分かっている
・oxidantに対する防御因子がanti-oxidant(抗酸化物質)
 物質…ビタミンC、ビタミンE、カロテン、グルタチオン、コエンザイムQなど
 酵素…グルタチオン系、チオレドキシン系など

【Nアセチルシステイン(NAC)】
・抗酸化物質としての働き
 直接的・間接的な抗酸化作用を持つ
 直接作用…活性酸素種(reactive oxygen species、ROS:酸化を起こす物質)
        と結合して酸化ストレスを抑える 
          (Moldeus et al 1986; Aruoma et al 1989、Cotgreave 1997)
 間接作用…グルタチオン(GSH)の前駆体で、代謝されグルタチオンとなり抗酸化作用
          (Moldeus et al 1986).

・臨床薬理学
 内服後速やかに吸収される
   (Sheffner et al 1966; Rodenstein et al 1978; Borgstrom et al 1986)
 最大血中濃度:内服後2–3時間  (Bridgeman et al 1991)
 血中半減期:6.3時間
 肝代謝でbioavailabilityは低い:未変化体は約10%
 肺内の濃度も用量依存性に増加する
  (Cotgreave et al 1987; Bridgeman et al 1991、Bridgeman et al 1994)

・抗酸化/抗炎症作用
 ・マウスに喫煙させる実験で、様々な抗酸化・抗炎症作用が確認された
(Moldeus et al 1986、Cotgreave and Moldeus 1987、Schreck et al 1992、Bridges 1985、Moldeus et al 1985; Voisin 1987; Linden et al 1988; Drost et al 1991、Jeffery et al 1985、Borregaard 1987、Rubio et al 2000)

 ・ヒトの実験でも証明された
  NAC 600 mg/day内服により・・・
   肺胞洗浄液内のGSH濃度増加 (Bridgeman et al 1991)
   肺胞マクロファージのO2-産生抑制 (Linden et al 1988)
   BALの多核白血球減少 (Jankowska et al 1993)
  COPD患者にNAC 600 mg/dayで・・・
   喀痰のeosinophilic cation protein (ECP)濃度減少
   多核白血球減少  (Sadowska et al 2005)
  インフルエンザ桿菌と肺炎球菌の口腔咽頭上皮細胞への付着を抑制
     (Riise et al 2000)

 ・喫煙への効果
  喫煙者にNAC投与し肺胞洗浄液を検査 
   ⇒NACによりリンパ球が増加し、細胞の構成が正常化する傾向にあった
    加えて、肺胞マクロファージの貪食能が改善しleukotriene B4分泌増加
      (Bergstrand et al 1986; Eklund et al 1988; Linden et al 1988).
  NAC投与により酸化物質(superoxide radicals)の減少 (Bergstrand et al 1986).
  NAC投与により炎症マーカー(eosinophil cationic protein, lactoferrinなど)が減少
      (Eklund et al 1988).

 ・エラスターゼ(組織内の弾性線維融解酵素)の活性を抑える
  NAC投与により気管支肺胞腔・血漿内の両方でエラスターゼ活性が低下
      (Aruoma 1989).

 ・遺伝子への影響
  NAC投与により・・・
   NF-kbの活性化を抑制;細胞内接着因子に関する遺伝子の調節を行う 
        (Schreck et al 1992)
   ヒト上皮細胞でvascular cell adhesion molecule-1の発現を抑制する
        (Marui et al 1993).

 ・ウイルスによる酸化ストレスへの作用
  マウスへのNAC投与により、インフルエンザウイルスの感染率低下
     (Streightoff et al 1966)
  インフルエンザウイルスは上皮細胞でROS産生を増加させ、NF-kbを活性化   
   ⇒NAC投与により、virus-induced NF-kb and IL-8 releaseが低下 
     (Knobil et al 1998)
  経鼻的にinfluenza virus APR/8を感染させたマウスでは、BAL中の
  xanthine oxidase, TNF, IL-6が感染後3日で増加 
   ⇒Xanthine oxidaseは肺と血中の両方で増加
    経口でNAC 1 g/kgを毎日投与⇒ 感染マウスの死亡率低下(p < 0.005)
      (Akaike et al 1990)

  Rhinovirusesもヒト気道上皮細胞の酸化ストレスを増加させる
   ⇒NACにより用量依存的に抑制された (Biagioli et al 1999)

 ・呼気凝縮液の研究
  COPDへのNAC(1200mg/日)投与により、呼気凝縮液中の炎症マーカー低下
     (De Benedetto et al 2005)

・臨床効果の検討
 ・Swedenでのopen, observational survey
  COPDのFEV1低下速度は、NACを2年間服用した患者で緩やかだった
   ⇒ 特に50歳以上の患者で著明な効果
     NAC服用患者でFEV1が年間-30 mL⇔それ以外の患者で年間-54 mL
             (Lundbäck et al 1992).
     5年後も、FEV1低下量はNAC群の方で小さかった
             (Lundbäck B 1993, pers comm)
   ⇒ NACの効果はありそうだが、研究手法に問題があるため断言できず

 ・BRONCUS study
  ヨーロッパでの多施設無作為二重盲検試験
  NAC600mg/日とプラセボを、COPD患者523例に投与
   ⇒ FEV1の年間低下率は差なし
     3年後のFRC(機能的残気量)はNAC群で有意に低下
     吸入ステロイドを使用していない患者では、NAC群で急性増悪回数が22%減少

 ・Steyらのsystematic review
  急性増悪予防、症状改善、副作用について様々な報告をまとめてを検討
  ①急性増悪予防についての論文は9つ
    ⇒ NAC投与を受けた351/723例(48.5%)で増悪なし
       ⇔ プラセボ群では229/733例 (31.2%)で増悪なし
    ⇒ relative benefit 1.56 (95%CI 1.37–1.77)
      number-needed-to-treat 5.8 (95% CI 4.5–8.1)
      *投与期間 (12–24 weeks)、累積NAC投与量との関係はなし

  ②症状改善についての論文は5つ
    ⇒ NAC投与を受けた286/466例(61.4%)で症状改善
       ⇔ プラセボ群では160/462例(34.6%)
    ⇒ relative benefit 1.78 (95% CI 1.54–2.05)  
       number-needed-to-treat 3.7 (95% CI 3.0–4.9)

   ⇒これは、過去のメタアナリシスを裏付ける結果であり、
    NACの臨床的有用性を示した
      (Grandjean et al 2000; Poole and Black 2001)
   *ただし、患者背景が不明なのが問題点 (Pauwels et al 2001)

 ・肺以外の慢性疾患262例へ、NACを投与しインフルエンザ感染や感冒発症の検討
  NAC 600 mgを1日2回投与、6ヶ月間
   ⇒ NAC群で風邪のイベント回数と重症度が低下
     局所症状・全身症状ともに低下
     プラセボ群とNAC群のインフルエンザ抗体セロコンバージョン率は同じ
   ⇒ NAC群では感染しても25%しか症状が出なかったのに対し、
     プラセボ群では79%も症状が出た
        (De Flora et al 1997).

 ・Chest 2009;136;381-386
  対象:40歳以上のCOPD(%FEV1<70%、%FRC>120%)24例
  介入:NAC600 mgもしくはプラセボを1日2回内服
  デザイン:randomized, double-blind, cross-over study
        6週投与→2週休薬→6週投与を
  指標:労作前後のIC、FVC、RV/TLC、endurance time
  結果:いずれもNAC治療後に改善
  考察:用量を増加したのと、測定項目を変更したのが良かった



・・・自分の勉強用メモを端折ったものですので、読みにくくて済みません。
臨床的効果をまとめると、
  ・1日1200mg(600mgを2回内服)で効果がありそう
  ・効果とは、症状改善に直結する気道閉塞の改善
  ・副作用は、今のところ軽い胃の不快感くらいしか報告なし


日本では内服薬が無く、残念ながら正式に認められていません。
サプリメントとして売っている物の品質保証はよく知りませんので、ご注意を。

調べてみると様々な疾患で効果が検討されていて、驚きました(精神疾患まで)。

去痰剤(ムコソルバンやムコダインなど)のCOPDへの効果も興味深いですので、後日紹介したいと思います。
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by tobbyK | 2009-08-28 19:21 | COPD

タイトルの治療法についてご質問を頂きました。
昨年レビュー(Proc Am Thorac Soc Vol 5. pp 454–460, 2008)を読んで
軽くまとめていたので、それを回答とさせて頂きます。

COPDに対する肺容量減少手術(Lung volume reduction surgery: LVRS)は、
一時期と比べ下火になっています。
が、症例によってはなかなか捨てがたい効果があるのも事実のようです。

さて、Bronchoscopic lung volume reduction (BLVR)とは、
気管支鏡を用いた肺の過膨脹を縮小させる手技全般を指します。
LVRSで得られた知見から、より侵襲を少なく、と言う事で、
気管支鏡を用いたこの方法が考案されました。

現時点では、BLVRに関する無作為比較試験の結果は出ておらず、
open-labelの少人数・短期間試験の結果しか得られていません。
(2008年秋頃の話ですが・・・出てたらすみません)
まだ、臨床で広く用いられるにはいたっていません。

現在、BLVRには3つの方法が考案されています。

①Endobronchial Valves
 ・一方向弁を気管支に挿入し、その先の肺を虚脱させる
 ・2つの弁についてトライアルが進行中
  *LVRSで得られた知見から、上葉優位型の肺気腫が対象となっています

 1.Emphasys Medical (Redwood City, CA)が開発した弁
  Emphasys Bronchial Valve for Emphysema Palliation Trial (VENT) trial
    ・・・他施設、open-label、無作為比較試験(内科治療 vs 一方向弁)
      100例以上検討している
      現在解析中(Rev Mal Respir 2004;21(6 Pt 1):1144–1152.)

 2.Spiration Incorporated (Redmond, WA)が開発した弁
    ・・・40例以上検討している(J Thorac Cardiovasc Surg 2007;133:65–73)
      現在、多施設無作為比較試験開始

②Airway Bypass system
 ・Macklemら、Joel Cooperの報告に基づく方法
  (Ann Thorac Surg 2003;75:393–397.、Proc Am Thorac Soc 2006;167:A726.)
 ・気道を狭窄させ肺を虚脱させるのではなく、気道と肺にバイパスを作り、
  気流を変更することで過膨脹を改善させる、という理論
 ・Broncus Incorporated (Mountain View, CA)が開発
  radiofrequency balloon catheterを用い、過膨脹肺と中枢気道を交通させる「fenestration」
   →肺のrecoil(弾性収縮力)を変えることなく、過膨脹肺を虚脱させる
  この方法は、気腫偏在型でも、びまん性気腫も理論的には有効のはず
   →びまん性気腫でトライアル進行中
 ・実際の方法
  まず、EBUSで血管がないか検討
  →カテーテルでアブレーションを行い、気道と肺に交通を作る
  →最後に、薬剤溶出性ステントを挿入し、穴の再閉塞を防ぐ
 ・これまで、19例の検討があるとの事
  →今後、無作為比較試験が始まるらしい

 *Am J Respir Crit Care Med Vol 178. pp 902–905, 2008に、
   この方法のメカニズムの検討論文あり。写真が面白かったです。

③Biological Remodeling
 ・気腫が偏在している症例に対して、一方向弁と同じ要領で肺を虚脱させるのが目的
  ⇔しかし、気道ではなく、肺胞で薬剤が作用し、生じる無気肺は不可逆性である
 ・Aeris Therapeutics (Woburn, MA)が開発
   (Am J Respir Crit Care Med 2003;167:771–778.)
 ・気管支鏡から、液状の癒着物質を注入
  →数週間かけリモデリングを完成させ、肺を虚脱させる
 ・これまで15例で施行 (Chest 2005;180:A230.)
  →現在、phase-2 trialへ


これらの方法の効果については、過去の論文の結果からは、
LVRSには及ばないなぁという印象です。
今後の発展に期待です。





ところで、yahooで宣伝されてる「聴くだけでしゃべる事が出来るようになる」という
英語教材に手を出すか出すまいか・・・悩み中。

以前「速聴」で失敗したしなぁ・・・


-追記-

質問に対する回答としては、内容がちょっと専門的過ぎますし、
効果についてあまり言及していませんでした。
ちょっとだけ追加します。

①Endobronchial Valves=気管内弁
 気管支に、一つの方向にしか流れない弁を挿入し、過剰に膨らんでいる肺をしぼませる方法

②Airway Bypass system=気道のバイパス
 膨らんでいる肺と、その近くの太い気管支に穴をあけ、ステントでつなぐ方法
 過剰に膨らんでいる肺から、空気が漏れ出る

③Biological Remodeling=生物学的再構築
 気管支から液状のある物質を肺内に注入し、病変部をしぼませてしまうと言う方法


①~③とも、呼吸機能の改善はあまり大きくない模様ですが、
運動時の過膨脹は少なくとも改善し、労作時息切れも減少するようです。
どういう症例が良い適応なのか?、副作用は?、などについては、まだ良く分かりません。
実用にはもう少し時間がかかりそうです。
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by tobbyK | 2009-06-25 19:23 | COPD

“cry wolf”は、こういう訳で良いかと思われ・・・


GOLD stage 1 is crying wolf
 Thorax February 2009 Vol 64 No 2

「GOLD stage 1のCOPD患者の10人中9人は実際は肺に疾患がなく、その後10年間に肺の疾患を生じるリスクが高いわけでもない!」

The SAPALDIA investigators [Thorax 2008;63:768–74.]
・COPD GOLD stage 1の人519例を11年間追跡し、肺機能検査が正常な6061例と比較
→ COPDの診断基準として、GOLDの基準ではなく、FEV1%の「lower limit of the normal (Eur Respir J 2008;31:681–2.参照)」を用いた場合、GOLD stage 1とされていた症例の1/3以上が「正常」であった
・初期検査でGOLD stage 1 とされた症例の約半数(224例)において、以下の症状が見られた;
 慢性の咳、慢性の痰、慢性の息切れなど
 ⇔ FEV1正常な人でも同様の症状が見られることがあり、以下のような疾患が原因であった;
   gastro-oesophageal reflux(often due to obesity)
   asthma (not yet diagnosed by a doctor)
   rhinosinusitis with postnasal drainage
   cardiac deconditioning
   obesity
   over-reporting
   undiagnosed cardiovascular disease…congestive heart failure
・彼らの肺機能はCOPD患者のような低下を示さなかった

Lung Health Study cohort [Am J Respir Crit Care Med 2002;166:675–9.]
・COPD GOLD grade1 症例のうち、11年後に%FEV1が60%以下になったのは10%未満


正常/GOLD stage 1程度のFEV1を示す喫煙者に対しては、まず禁煙をサポートすべきであり、「COPD」のラベルを貼るべきではない
⇒不適切な治療をしてしまう可能性がある。他の疾患の可能性について検討すべき。

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by tobbyK | 2009-03-20 18:27 | COPD

COPDの患者さんは、血栓症(冠動脈、肺塞栓症、部静脈血栓症など)のリスクが、そうでない人と比較し2倍ほど高いという報告があります。 [Chest 2005; 128: 2068–2075]

PEと急性増悪の関係は?という論文。

Prevalence of Pulmonary Embolism in Acute Exacerbations of COPD
A Systematic Review and Metaanalysis

CHEST 2009; 135:786–793

Background
・COPD急性増悪の約30%は原因不明である。
・肺塞栓(Pulmonary embolism; PE)が呼吸症状(胸痛や息切れなど)を起こす。
・COPD患者は肺塞栓のハイリスク群(体動が少ない、炎症、合併症が多い)である。
 →これまで、COPD急性増悪におけるPEの頻度は不明である。

Methods
・COPD急性増悪患者におけるPEの頻度について、過去の報告をsystematic review
 (MEDLINE, CINAHL, and EMBASE)
・PEの診断に、CTもしくは血管造影検査を行った、横断もしくは前向き研究のみ採用

Results
・2,407の論文あり
 →5つが今回の採用基準を満たした(sample size, 550 例)

・COPD急性増悪患者550例において、
 PEの頻度:19.9% (95% CI, 6.7-33.0%; p = 0.014)
 入院した患者でのPEの頻度: 24.7% (95% CI, 17.9-31.4%; p = 0.001)
                    ⇔救急外来で診断がついたPEは3.3%のみ

・症状や身体所見:COPD急性増悪でPEのあった患者となかった患者では、差がなかった

Conclusions
・COPD急性増悪で入院した患者では、4人中1人にPEあり!
 → 原因の一つとして必ず考慮すべき
 → PEのpretest probabilityを検討する(Well's criteriaなど)


なんと・・・多いですね。
あまりそういう目で見た事がなかったですし、COPDの場合、シンチによるPEの診断が難しいもので・・・

勉強になりました。

COPDにおけるDVT・PEの正確な頻度はこれからきちんと調べないといけないと思いました。
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by tobbyK | 2009-03-06 17:26 | COPD
新年早々何かと忙しく、またも少し古いネタを。
COPDの肺高血圧に対して、ボセンタンは効果があるか?というもの。


A randomised, controlled trial of bosentan in severe COPD.
 Eur Respir J. 2008 Sep;32(3):619-28. (スイス)


Background
・ボセンタン(トラクリア錠)は、肺動脈性肺高血圧症の重症者に適応がある。
・COPDにおける二次性肺高血圧症は安静時の計測ではそこまでひどくないが、運動時に悪化する。
・ボセンタンで肺高血圧を伴うCOPDのADLを改善できるんじゃないか?

Materials and Methods
定式化
P:GOLD3-4のCOPD30名(治療をしても症状ありの人)に対し、
E:bosentanの投与(62.5mg×2/日を2週間、次に125 mg×2をのこり、トータル12週間)は、
C:プラセボと比較し(=2:1で割り付け)、
O
 ・primary end-point
  6分間歩行距離
 ・secondary end-point
  health-related quality of life、肺機能、心血管血行動態、
  最大酸素摂取量・肺血管潅流パターン(SPECTで測定)

Results
・6分間歩行距離 …改善なし(6分間歩行距離: 331±123 vs 329±94 m)
・肺機能、肺動脈圧、最大酸素摂取量、肺血管潅流パターン…変化なし
・ボセンタン群で、動脈の酸素分圧は低下、A-aDO2は増加、QOLは悪化

Conclusion
・投与してもあまりいいことない


理屈から言えばその通りの気がします。
周囲の肺が機能しないのであれば、そこの血流を改善しても意味がない・・・
それどころか、症状を悪化させてしまう恐れがありますよね。
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by tobbyK | 2009-01-06 23:58 | COPD