カテゴリ:咳嗽( 3 )


思いつきシリーズ。

最近ひどい咳が続いたため、
仕事の空き時間に咳(cough)について色々な文献を読んでみました。

ちょっとずつまとめて行こうと思います。

第1回目は、「咳(cough)とは?」

まず、「咳」って何でしょうか?
「Widdicombe J, Fontana G. Cough: what’s in a name? 」
 (Eur Respir J 2006; 28: 10–15.)
に、詳しく記載してありました。
それによると・・・

・ヒポクラテスの時代から記載がある
・実は、咳に関する論文のほとんどで、「咳」の定義づけがなされていない
 ⇔ 教科書には色々と書いてある

・教科書によると・・・
(Leith DE. Cough. In: Brain JD, Proctor DF, Reid LM, eds. Respiratory defense mechanisms. New York, Marcel Dekker, 1977; pp. 545–592.)
 咳反射(cough reflex:CR)は生体の防御反応であり、3つのphaseがある
  ①吸気 (inspiratory phase)
  ②声帯が閉じ、呼気努力が生じる (compressive phase)
  ③声帯が開き、急激に呼気が生じる (expulsive phase)
  *1回息を吸ってから空気を吐き出すのがポイント


・咳とよく似た気道の防御反射として、expiration reflex(ER)がある
 これは、声帯・気管などの機械的・化学的な刺激で生じる
 1841年にWilliamsが初めて報告した・・・犬の喉頭にふれると生じた
    (Rep Br Assn Adv Sci 1841; August:411–420.)
  *吸気phaseがなく、compressive phaseとexplusive phaseのみであるのが特徴!
 
*CRとERの区別が必要な理由*
1. 両者の機能は全く異なり、正反対
 CRは空気を一旦肺に入れ、explusive phaseの排出力を高めている。
   ⇒これは主に気道で生じる。
 ERは、下気道に異物が入るのを防いでいる。
   ⇒これは主に喉頭で生じる。

2. 入力経路が全く異なるはず
 CRは吸気からスタートし、ERは呼気からスタートするため。
 脳幹でのスイッチはどうなっているのだろう?

3. 脳幹での出力経路が異なる
 neural gating mechanismが、両者を分けている。
  (Pulm Pharmacol Ther 2004; 6: 369–381.、
   J Physiol 2000; 525: 207–224.、
   Pulm Pharmacol Ther 2002; 15: 227–234.、
   Respir Physiol Neurobiol 2006; (In press).)

4. 生理的調節機構が異なる
a Hering–Breuer inflation reflex(気道平滑筋中に存在する伸展受容器(Stretch receptor)が、肺の拡張によって刺激され、吸気が抑制される)により、ERは増強されるが、CRは増強されない
  (Respir Physiol Neurobiol 2006; (Inpress).)
b COが高値になるとCRは抑制されるが、ERは抑制されない
  (Bratsl lek Listy 1986; 85: 533–540.)
c 徐波睡眠中は、CRは抑制されるが、ERは抑制されない
  (J Appl Physiol 1978; 45: 681–689.、J Appl Physiol 1979;49: 17–25)
d 新生児では、CRより先にERが出来るようになる
  (Physiol Bohemslov 1973; 24: 257–261.)
e 麻酔中は、ERの方がCRより強く抑制される
  (Pulm Pharmacol Ther 1996; 9: 285–292.)
f CRは意識的に強くすることができるが、ERは出来ない
g CRは感覚と関連するが、ERは関連しない
  (Eur Respir Rev 2002; 12:249–253.)

5. 動物実験では、ERとCRでの鎮咳薬の作用が全く異なる
  (Physiol Bohemslov 1972; 21: 667–670.)


☆CRとERを区別していない事による、現状の臨床上の問題点
 ・GERDによる咳嗽はERでは?
  酸の食道刺激→迷走神経→CR?
  酸の喉頭刺激→ER?
   ⇒いまだ、咳パターンの検討はない

 ・後鼻漏による咳嗽はどっち?

 ・喘息やCOPDはどっちが主体?
    
  ・・・などなど


今回のまとめ
・CRは主に気管・気管支での反応、ERは主に喉頭まででの反応。
 ⇒ 目的が異なる。
・CRとERを区別する事で、病変の首座の区別の手助けになるだろう。
 ⇒ より適切な治療につながる可能性あり。
・咳嗽を生じる様々な疾患でパターンを調べてみたい。(個人的に)

現在の自分は、だいたい、
 ①息を吸う
 ②喉頭付近に刺激を感じる
 ③ER2~3連発→CR1発
というパターンです。
ゆえに、自己診断では、
「感染後の一過性の喉頭~気管レベルでの過敏性亢進→ER主体」
と思われました。


次回に続く。。。(いつか)



-徒然-

先日NHK-BSで、「ヒロシマ 少女達の日記帳」をたまたま見ました。
原爆でも焼けなかった少女たちの日記をもとに、
戦時下での少女たちの日常をみずみずしく描いてありました。

その中で、学校の先生が言った一言。
「『哀しい』と思う気持ちが、人間の感情で一番美しいものだ」

解釈は色々あり、自分もきちんと理解できたか分かりませんが、
とても印象的でした。
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by tobbyK | 2009-08-13 17:00 | 咳嗽
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多くの職場でそうであろうかと思いますが、
医師の世界でも女性がどんどん増えています。

それに伴い、結婚・妊娠・出産などがあっても、
女性が仕事を続けられる環境を整えよう、
という方向に向かっています。
(建前上、かも知れませんが)

ハード・ソフトの両面でまだまだ不十分なのは、
各地を放浪してよく理解しています。
じゃあ、どの職業なら環境が整っているのか?
と考えると、良く分からないのですが。
(ご存知の方教えてください)

よく海外の話を挙げる人がいますが、
医療スタッフの数が全然違ったり、
そもそもの基礎となる社会の価値観が全く異なるので、
海外の良い面ばかり参考にしてもちょっと無理があると感じてしまいます。
理想はもちろん大切なのですが、
悩んだり苦しんだりしている人は目の前にいるので・・・



と、冒頭からよく分からない話をしていますが、
本日妻が仕事で一日不在のため、
私が幼児二人の子守中であり、
何となくそんな気分になった、というだけの話です。

写真は、連れて行った水族館で、長女とイルカ。

次女はずっと抱っこ。

疲れた長女も、この後から抱っこ・・・

妻の偉大さを感じます・・・

早く帰ってこないかなぁ。。。
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by tobbyK | 2009-08-08 16:16 | 咳嗽

風邪を引いた後から咳が続いており、
とうとう3週間目に突入しました。
自己診断は「感染後咳嗽:post infectious cogh」なのですが、
一応呼吸器内科医なので、つい最悪のケースを考えてしまいがちです・・・

さて、感染後咳嗽のおさらいを

2006年、ACCPの「咳嗽のガイドライン」が出ました。
そこで、「Postinfectious Cough」と言う独立した概念として記述されました。

概念
 ・ウイルスやその他の微生物の感染後に生じる
 ・咳嗽が3週間以上持続するが8週間以上は続かない
 ・胸部X線写真で異常がない
 ・咳嗽は自然寛解する

病態
 ・炎症 = 感染症による上皮構造の破壊 ± 上・下気道の一過性の過敏
   ⇒ 粘液産生増加
      気道クリアランス低下
      後鼻漏による咳受容体刺激
 *咳感受性の亢進なし ⇔ atopic coughとの違い
 *好酸球浸潤なし ⇔ 喘息との違い
 ・持続する咳嗽⇒腹圧上昇⇒胃食道逆流、という機序も疑われている

治療法
 ・時間が薬!
 ・中枢作用型鎮咳薬 (エビデンスはないが・・・)
 ・30~40mgのプレドニゾロンを投与し、2~3週間で漸減 (という論文も!)
 ・イプラトロピウム(アトロベント) (という論文も!)

詳しくはChest 2006;129;138S-146Sを。


最悪のケースは、もちろんあの病気です。
長期休養はできますが、今の勤務状態では何の補償もない=無収入に転落してしまう。
・・・医師って結構タイトロープな人生だと実感します。



-徒然-

「プロフェッショナルとは~~~」
と語る人をよく雑誌やテレビで見かけますが(医学系にも結構多い)、
自分はそういう人が苦手です。

その有名人が、その人の傍にいる人達にとって、
実は別の意味で「とんでもない」人であるという事はよくありますし。
自分自身、よく知らない人に何かを語られても、
あまりリアリティーを感じることが出来ない想像力の乏しい人間ですし・・・
傍にいる人たちがその「エライ人」について色々な角度から語る方が、
リアリティーがあると思うのですが。

あと、言語化は確かに大切ですが(家族、特に夫婦間では・・・と実感)、
きちんと言語化できたかどうかの検証はとても難しいと思います。

「大切なのは相手が何を話しているかではない。
 相手の話し方や雰囲気をよく観察しなさい」

とは、学生時代に読んでとても感動した「リトル・トリー」より。
いまだに、その通りかなぁと思っています。

この本は、作者に色々な問題があるみたいで、ちょっと残念な所があります。
でも、本当にそんな問題があったとすれば、
なおさら内容の素晴らしさは奇跡的としか言いようがないと思っています。

いつか子供にも読んでもらいたい本です。
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by tobbyK | 2009-07-31 18:20 | 咳嗽