カテゴリ:こんな時どうする?( 8 )


お題その4 「先生、どっち向きが良いですか?」の解答編です。
遅くなってすみません。
本業がなかなか進まないもので、しばらくブログから離れていました。


では、Nunn、Westなどの教科書を参考に解説します。

原則的には、どのような体位であれ、下側になっている肺の領域での換気量が多くなります。
 立位なら、下葉。
 背臥位なら、背側部分。
 腹臥位なら、腹側部分。
 側臥位なら、下になっている方の肺。
これは、重力と胸腔内圧が、肺の膨らみ方に与える影響のためです。
簡単に言うと、もともとつぶれている肺のほうが、吸気時の伸びシロが大きい、という感じでしょうか。
(*もちろん、正常肺に限った話です)

さらに側臥位の場合、腹部臓器の重みにより下側の横隔膜が上がり、
下側の肺を圧迫して縮めます。
反対に、上側の横隔膜は下がり、また胸郭が伸びて肋間も若干開くため、
上側の肺は広がります。
一見、広がった上側の肺の方がよく見えますが、広がっている肺は呼吸による動きが少なくなってしまい、換気量(=出入りする空気の量)としては、圧迫されて縮められている下側の肺の方が大きくなります。
そして換気量を増やすと、高炭酸ガス血症を改善する事が出来ます。

次に、肺の中での血流の問題です。
重力の影響のため、やはり下側になっている肺領域で血流が多くなります。
肺の部位による血流量の差は、先に述べたような部位による換気量の差よりも大きいといわれています。
で、酸素化の改善のためには、換気と血流の割合をちょうどよくする必要があります。

この患者さんの場合・・・
 左肺は動きが悪いので換気量は少ないが、血流は保たれている=無駄な血流が多い

そこで、換気を増やし、無駄な血流を減らすためには・・・
「正常な肺を下にするような側臥位を取ればよい」、ということになります。


いかがでしょうか?
現時点での私の理解ですので、間違いや知識不足があるかもしれませんので、
その際はご指摘いただけますと幸です。
また、これは理屈上の話で、現実は肺病変の状態によって変わってしまいます・・・
(予想と反対の結果になった経験もあります)

コメントでご指摘がありましたように、患者さんの状態が許せば、色々な体位を試してみるのが現実的かもしれません。。。




最近注文した本が、全部当たりだったので、紹介します。

「Asthma and COPD: Basic Mechanisms and Clinical Management」
c0177128_18224657.jpg

分厚くてお値段も高いですが、自分が知りたい内容が分かりやすくまとめてありました。
頑張って読みたいと思います。


「呼吸のバイオロジー なぜ呼吸は止められるか」
c0177128_1823429.jpg

面白い、の一言です。
「呼吸器科医」と名乗るためには、日常臨床に必要な知識はあくまで必要条件であり、
「肺とは?呼吸とは?」についても一度深く考えねばならんと思います。


「RUN」
c0177128_18214842.jpg

小学5年生の時に母親が自殺。
自分に宛てられた、たった3行の遺書。
その意味を問い続けながら海外で闘う日本人サッカー選手のドキュメントです。
家族って、何なのでしょうね。
[PR]

こんな時どうする?シリーズ

お題その4 「先生、どっち向きが良いですか?」

・75歳男性
・結核遺症のため、左胸郭は縮小している
・急性気管支炎+呼吸筋疲労によると思われる呼吸困難のため入院
 血液ガス検査の結果、低酸素血症+CO2軽度貯留の2型呼吸不全
・ナースから質問
 「先生、左肺の動きはあまり良くないんですよね。
  じゃあ、どちらかの側臥位にしたら呼吸が楽になる、ってことはないですか?」

⇒ かっこいい返事をしたいところですが、どうしましょう?




- 追記 -

いわゆる「新型インフル危険地域」への渡航を避けるために米国の学会参加を中止したのに、
いつの間にか自分自身が危険地域の住人になっていた・・・
[PR]

お題その3 「過呼吸の患者さんです!」の解答編です。
コメントありがとうございます。


担当医(私)は最初、救急隊の「過呼吸の患者さんです!」の言葉を丸飲みにしてしまいました。

「大丈夫ですよ~」なんて患者さんを落ち着かせようとしながら血液ガス検査を施行。

その間に話を聞いていると、「初めて」「突然」というキーワードが・・・

「こりゃなんかおかしい!」

 「初めて」 ⇒ 過換気症候群は、過去にも既往があることが多い(経験上)
 「突然」 ⇒ 血管系の異常が第一。SpO2の低下はないので、気胸は考えにくいし、あっても軽症。



「胸の痛みはありませんでしたか?」と聞くと、

「突然前胸部が痛くなって、その後背中が・・・ああ!手足が痺れる!!」


・・・もうお分かりですね。

すぐに造影CTを撮影した結果、大動脈解離でした。

それも、上行大動脈から両側総腸骨動脈に到る広範なものでした(大動脈弓の3分枝にも解離あり)。

動脈血液ガス検査の結果も大した呼吸性アルカローシスはなく、

この方の手足のしびれは解離によるものでした。

緊急の大手術となりました。

比較的若いケースであり、その後Marfan症候群やEhlers-Danlos症候群の可能性を調べたのですが、今回のケースでは見当たりませんでした。


 - 教訓 -
 ・「突然」+「初めて」は本当に怖い組み合わせである
 ・「過換気によるしびれ」と思い込まない


呼吸器に関係あるのか?というケースですみません。。。





・・・ところで、とうとう神戸で渡航歴ナシの新型が出ましたね。現在得ている情報では、本当にたまたま見つかったようです。そしてさっき、大阪の高校生にも疑い濃厚の症例が出たとの速報が。

現在大阪で診療所業務中なんですが、裏に高校もあるし、小児~高齢者まで発熱者は毎日いる・・・

弱毒のようですし、憂鬱なのは患者さんを診察する事でもインフルエンザにかかる事でもありません。

行政とマスコミの作り出した「雰囲気」が一番憂鬱。。。
[PR]

最近は更新が遅くなっており申し訳ありません。
色々ありまして・・・


こんな時どうする?シリーズ

お題その3 「過呼吸の患者さんです」

・35歳男性 耳鼻科開業医
・16時頃、仕事中に急に呼吸が荒くなり、手足がしびれ始めた
 → 職場のナースが救急車を呼んだ
・救急隊からの連絡 「過呼吸症候群と思われます。BP180/90、SpO2 100%、PR 92です」
 → 当院へ搬送される
・病院到着時、一見して確かに多呼吸
 「手足がしびれますか?」 ⇒ 「しびれてます!」
 「こういう事は初めてですか?」 ⇒ 「初めてです!」
 ・・・意識はほぼclearだが、非常に苦しそう

・バイタルはとりあえず測定しなおすとして、、、次はどうしますか?


- 追記 -

大阪では、カレーうどんが主食として通用するようです。どこにでもあります。

ということで、本日の夕食はカレーうどんにしてみたわけですが、

シャツに黄色い水玉が出来てしまいました・・・


食文化は本当に面白いですね。

そういえば九州の熊本ではラーメンは主食扱いでしたが、博多では飲んだ後の〆扱いでした。
[PR]

お題その2 「先生、俺、歌いたいっす」の解答編です。


今回は特発性自然気胸・初発の一例です。

翌日のライブで歌う事が本人の強い希望です。
ライブ後の療養についてはこちらの言い分を聞いてくれそうです。
ですので、明日のライブ終了まで自由にさせて、気胸のために大きな問題が生じるか?を考えねばなりません。
気胸の状態で上手く歌えるかどうか?については、そこまでこちらが心配する事でもない気がします。(ロックは上手・下手だけが大切ではありませんし・・・)
結局、生命の危険=「緊張性気胸」が生じるかどうか?が問題になります。
(*特発性血気胸は、今回はないものと考えてください)


さて、特発性自然気胸についてですが、なぜ生じるのかよく分かっていません。

病理学的には、臓側胸膜内、もしくは臓側胸膜直下に存在する含気領域=bleb もしくは bullaの破綻による、とされます。実際には、bullaが原因である事がほとんどと言われています。
CTでは、このbullaが80%のケースで認められます。CTで見えない場合でも、Opeの際には確認される事が多いです。

blebは、肺胞壁の破裂→間質内への空気の流入、で生じると考えられています。縦隔気腫と似たようなもんです。
肺胞壁が破裂する原因は、喫煙、感染などによる末梢気道炎症→air-trapping→末梢気腔拡大、という説があります。これは、喫煙者にblebが多いことや、換気血流シンチでair-trappingを確認したと言う論文が裏づけとしてあります。

bullaの成因は不明です。
肺尖部に多い、痩せ型で背の高い男性に多い(193cm以上の人では気胸の発生率が200/100,000/year!)という事実から、肺尖部は血流が少ないから、とか、陰圧が強いため肺胞が過伸展される、などといった説が考えられています。

さてさて、この方の臓側胸膜に開いた穴は、閉じているのか、開いているのか、半開き(check-valve)なのか・・・?いずれかによって、その後は以下のようになると予想されます。
 ・既に閉じている→放って置いても改善(再発は十分ありえるが)
 ・まだ開いている→胸腔内圧が大気圧と同じになるが、それ以上には高くならない
 ・半開き/穴が小さい=check-valve→胸腔内圧は徐々に上昇→「緊張性気胸」へ



では、いつも我々が恐れている「緊張性気胸」とは、そもそも何なのでしょうか?
以外にちゃんと書いている教科書は少ないです。「経験すりゃ分かるだろ!」って事ですかね・・・

実は、「緊張性気胸」の定義はこれといって決まっておらず、文献によって様々です。
以下に文献を提示します。

「臨床的な定義」
・Postgrad Med 1974;56:87-92.
 重篤な全身状態
 胸腔穿刺で空気が流出
 レントゲンで縦隔が対側にシフト±横隔膜平低化

・Lancet 1979;i:671.
 胸腔穿刺で空気が流出する

・J Thorac Cardiovasc Surg 1974;67:17-23.
 人工呼吸患者では、レントゲンもしくは身体所見で縦隔のシフトにより診断する

・Can J Anaesth 1990;37:584-6.
 循環不全があり、胸部レントゲンで対側に縦隔がシフトしている
 循環不全が胸腔ドレナージで改善する

・J Trauma 1968;8:212-27.
 循環不全+巨大な気胸腔

「検査/病態生理学的な定義」
・Crofton and Douglas's respiratory diseases. 5th ed. Oxford: Blackwell Science, 2000:1182-211.、Emedicine Specialities, 2002. (http://www.emedicine.com/med/topic2793.htm).
 気胸腔の胸腔内圧が、大気圧より高い

・J Trauma 1968;8:212-27.
 気胸腔の胸腔内圧が、呼吸サイクル全般において大気圧より高い 

・Am Rev Respir Dis 1983;127:171-4.、Diagnosis of diseases of the chest. Philadelphia: W B Saunders, 1978:598.
 気胸腔の胸腔内圧が、呼気時のみ大気圧より高い 

などなど、です。
(*今回は、しばしば見かけるventilator下の緊張性気胸の話は置いておきます)


緊張性気胸に関する動物実験の報告を以下に提示します。 

・犬の胸腔にカテーテルを挿入し、空気を入れた
 →心拍出量低下
 この実験により、緊張性気胸の病態生理の基礎(といわれる考え)ができた
 「空気による圧迫→右心系・大血管の圧迫→前負荷低下→心拍出量低下」
*しかし、犬の胸膜はすぐに破れ、対側の胸腔にも空気がすぐに入り込んでしまうため、
  人とはかなり異なる
   J Appl Physiol 1958;12:255-61
   J Pathol Bacteriol 1925;37:1-8.、
   J Appl Physiol 1963;18:279-83.

・ヤギ、ブタ、ヒツジの実験
 犬と異なり、対側の胸腔内圧は陰圧を維持できる
 気胸の胸腔内圧が非常に高くなっても、左胸腔は陰圧を保っていた
 緊張性気胸により循環不全に陥るまでに、かなりの代償作用があることが分かった
 ☆呼吸による代償
   ・呼吸回数増加
   ・一回換気量増加
    →換気量は保たれるので、低酸素が生じるのは虚脱肺におけるシャントのため
   ・対側の胸腔内圧がより強い陰圧になる
   ・胸壁の動きが大きくなる
    *通常、胸腔内圧は陰圧であり、-5~-8 cmH2Oといわれています。
      しかし、努力吸気時には、最大で-80 cmH2Oにも達するといわれており、
      気胸が進展するのを防ぐのに重要な役割を持つと考えられています。

 ☆心臓の代償
   ・頻脈
    →心拍出量はかなり最後の局面まで保たれる
      血圧が19%上昇するというスタディもある
      最終局面では呼吸不全が死因となり、この状態でも心拍出量は70%程度保たれている
      →片側の緊張性気胸だけでは、心拍出量は落ちない

 ⇒低酸素が問題なのであって、気胸による心拍出量低下は問題ではないと考えられている
      J Trauma 1968;8:212-27.
      Am Rev Respir Dis 1983;127:171-4.
      Am J Vet Res 1989;50:280-4.
      J Appl Physiol 1996;81:1664-9.
      Bull Eur Physiopathol Respir 1986;22:545-9.



さて、今回のお題に戻ります。
人間の緊張性気胸に関する過去の報告では、初発症状から診断までの時間は数分~16時間、とあります(Emerg. Med. J. 2005;22;8-16)。過去の検討結果や動物実験の結果から、この間は低酸素がどんどん進行していくと思われます。
                  ↓
「16時間、リスクをとって24時間の間低酸素が進まなければ、少なくとも緊張性気胸は大丈夫ではなかろうか?」と思われますが、いかがでしょうか?


と言う事で、
 本日は脱気で様子を見る
 ⇒ 明日再び外来受診し呼吸症状、SpO2、気胸の進行度をチェック
 ⇒ 昨日の状態から進行がなければ、おそらく大丈夫・・・ではなかろうか?

くらいの対応でいかがでしょうか?

 まあ、こんなご時世ですから、ライブ参加を出来るだけ止めて、
 その証拠を残しておかないとどんな目にあうか分かりませんが・・・


個人的には、
 ・努力呼吸数分間、もしくは階段歩行などをしてもらう
  ⇒ SpO2 & レントゲンチェック
 もしくは、
 ・「努力呼吸数分間」の前後でCTを撮影し、気胸腔の体積を計算

などという、「check-valve test」とでも命名しましょうか、そういうテストをやってみたいと思案中です・・・


いつか臨床研究をしてみたいと思います。



-追記-

いわゆる「発熱外来の診療拒否問題」について、ちょっと思っている事を書こうと思いました。

思いましたが、

「おうしょうぎむいはん」を変換したら、

「王将義務違反」

となったため、想像の羽根があらぬ方向に伸びてしまい、

いろんなことを考えてしまいました。

「王将」にも色んな義務がありそうだ・・・

(関西方面の方じゃないと分からないですかね?)
[PR]

こんな時どうする?シリーズ

お題 2  「先生、俺、歌いたいっす!」

・20歳男性。生来健康。長身、痩せ型。喫煙歴10本/日×2年。
・6時間前に突然右胸痛が出現し、その後乾性咳嗽も出現。 
 ⇒診察とレントゲンの結果、右気胸(Ⅱ度)と診断。
・現時点での自覚症状は軽度の乾性咳嗽程度。息苦しさはない。
・バイタルサインは安定している。
「俺、バンドのボーカルなんっす!明日の夜ライブがあるっす!俺がいないと成り立たないっす!!」

 ・・・どうしましょう?
[PR]

お題1 「結核が心配で・・・」の解答編です。
ご意見色々とありがとうございました。

私の用意した答えは・・・
「入院したという友達の状況確認のため、その人の住居のある地域の保健所(もしくは保健センター)に連絡する」

☆Point☆
 「この受診者は、保健所の追跡調査対象から漏れている」


誰が悪いのか知りませんが、私はこのようなパターンで受診された方を数回診ました。
さて、この方法の良い点と難しい点は以下のとおり。

☆良い点
 1.入院した人の状況の詳細を知る事が出来る 
     =リスクの程度(本当の話かどうかも?)が分かる
 2.いつどのような検査・対処をすべきかが分かる 
     =自分で考えなくても良い(笑)
 3.公衆衛生の改善に役立つ

★難しい点
 結核で入院した友人のプライバシー、受診者と友人の今後の人間関係
 対策:直接友人同士で語り合ってもらう
     受診者本人に直接保健所に連絡してもらう


いかがでしょうか。
発病の確認と、感染源の詳細を把握する事が第一かな、と思っています。

ご意見ありましたら、よろしくお願いいたします。(このスタイルの印象についても)
[PR]

思いつき企画その1。



【お題 1】

・23歳女性。
・よく一緒に遊んでいた友人が結核で入院したとのこと。
・最近テレビで芸人が結核になったのを見て、自分も心配になったので受診した。


さて、最初にすべきことは何だと思いますか?



-追記-

豚インフルエンザ、phase 4になりましたね。
なぜメキシコだけあんなに死亡者が出るのか、自分の頭ではまだ理解できません。
自分たちの日常診療が今後どんな感じになるのかも、まだよく分かりません。
分からない事だらけなので、今のところはとにかく日々の予防のみ、ですね。

危険地域のSan Diegoで2週間後から行われる学会に参加予定なのですが・・・
帰国禁止になったりして。
[PR]