カテゴリ:間質性肺炎( 5 )

Thorax 2010;65:21–26で報告された、慢性呼吸器疾患患者における新しい息切れスケールの「D-12」は、他の質問法と比較して簡便な方法。

「D-12」 
以下の項目について、None/Mild/Moderate/Severeで回答。各0-3点にあてはまる。
 1. My breath does not go in all the way
 2. My breathing requires more work
 3. I feel short of breath
 4. I have difficulty catching my breath
 5. I cannot get enough air
 6. My breathing is uncomfortable
 7. My breathing is exhausting
 8. My breathing makes me feel depressed
 9. My breathing makes me feel miserable
 10. My breathing is distressing
 11. My breathing makes me agitated
 12. My breathing is irritating



その妥当性について間質性肺疾患患者のみで検討した報告。

Dyspnea-12 Is a Valid and Reliable Measure of Breathlessness in Patients With Interstitial Lung Disease
CHEST 2011; 139(1):159–164


Objective
間質性肺疾患におけるDyspnea-12 questionnaire (D-12)の妥当性を検討

Methods
対象:101例のILD症例
方法:以下の質問法を行う
 ・ベースラインでは101例が回答    
  D-12 (scale range, 0-36, with a high score indicating worse dyspnea)
  Medical Research Council (MRC) dyspnea scale
  St. George Respiratory Questionnaire (SGRQ)
  Hospital Anxiety and Depression Scale (HADS)

 ・2週間後のフォローでは84例が回答
  D-12
  global health transition score

 ⇒ D-12の心理測定的特性について検討;
      天井効果とフロアー効果
      内的一貫性
      再現性
      構成概念妥当性

Results
内的一貫性:高い。Cronbach α=0.93。
再現性:高い。intraclass correlation coefficient=0.94。

D-12と他のスコアの相関;
 MRC grade・・・r=0.59; P<0.001
 SGRQ・・・symptoms, r=0.57
        activities, r=0.78
        impacts, r=0.75
        total, r=0.79; P<0.001

因子分析の結果、THORAXで報告されたD-12の「構造」がこの患者群でも確認された

Conclusion
間質性肺疾患の患者において、D-12は信頼性が高い質問法である。



慢性の間質性肺疾患では、病勢や治療効果の評価が微妙で難しい場合も多いので、新しい評価法が出るのは良いと思います。しかし、この論文によると、生理学的な指標(FVC%、DLCO%、6MWD)と最も単相関が良好だったのはMRCでした・・・うーん。
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たまたま見かけた論文です。
これと反対の報告を、日本の研究会でいくつか見かけました。
こっちの方が正しい感じがしますが・・・


Idiopathic Pulmonary Fibrosis and Emphysema
 CHEST Published online before print February 2009

Background
・肺気腫が併存する場合、特発性肺線維症(IPF)の経過が変わるという話がある
・IPF+肺気腫と、IPFのみの症例において、
 臨床的特徴、喫煙歴、肺機能、エコーで計測した収縮期肺動脈圧(eSPAP)、死亡率について検討

Materials and Methods
・110例のIPFについて検討
 カルテとHRCT
 → 2つのgroupに分類
    IPF+肺気腫
    IPFのみ

・Kaplan Meier method, Log Rank test, Cox regression modelで生命予後を統計解析

Results
・IPFに肺気腫が合併する割合:28% (31/110)
・IPF+肺気腫の場合、IPFのみの人と比べて・・・
 男性が多い (OR:18, 95%CI:2.7–773.7; p = 0.0003)
 喫煙者が多い (OR:3.8, CI:1.36–11.6; p = 0.04)
 労作時のSpO2低下が強い
         (|gDSpO2 rest-exercise: (16.3 ± 6.7 vs 13.5 ± 4.6, p = 0.04)
 HRCTでの線維化スコアが高い (1.75 ± 0.38 vs 1.55 ± 0.36, p = 0.015)
 肺動脈収縮期圧が高い (82 ± 20 mm Hg vs 57 ± 15 mm Hg, p < 0.0001)
 死亡率が高い (生存期間中央値 25 months vs 34 months, p = 0.01)
  → 以下の2つの要因が死亡率増加の危険因子
      %FVC < 50% (HR: 2.6, 95% CI: 1.19–5.68, p = 0.016)
      eSPAp ≥ 75 mm Hg (HR: 2.25, 95% CI: 1.12–4.54, p = 0.022).

Conclusion
IPF+肺気腫患者は、IPFのみの患者と比較して死亡率が高い。
 → 肺高血圧が一因としてあるのではないか。
 


研究会で見た報告では、IPF+肺気腫の方が長生きする、みたいな話だったので、全く理解できずにいました。
この報告のほうが納得できます。
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IPネタ続きですみません。目についたもので。

喫煙関連肺疾患といえばDIP、RB-ILD、気腫、Langerhans cell histiocytosis、肺癌、そしてIPF(これは△くらいらしいですが)などでしょうか。

今回は、喫煙がNSIPの原因でもあるのではないか?という論文。


Non-specific interstitial pneumonia in cigarette smokers: a CT study
European Radiology(e-pub) (ドイツ+NZ+英国)

Purpose
・喫煙はNSIPの原因だろうか?検討する。

Materials and Methods
・対象(* NSIPは全例病理診断)
 ① current smoker+NSIP 10人
 ② ex-smoker+NSIP 8人
 ③ current smokerでIPなし 137人
 ④ non-smoker+NSIP 11人

・検討項目
 ①と②の症例(=smoker NSIP)において、肺気腫の存在率と進展を検討
  ⇔③の症例なかで、
    COPDの診断基準を満たす人34例(group A control)
    COPDの診断基準を満たさない人103例(group B control)   と比較
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        *NSIP+気腫?の例

Results
・肺気腫の存在率
 ①+②の症例(smoker NSIP):14/18 (77.8%)に存在
 ⇒group A controlでは(25/34, 73.5%)に肺気腫あり→差はなかった
  group B controlでは(18/103, 17.5%)に肺気腫あり、少ない
   →①+②と比較し有意差あり(P < 0.0005)

・smoker NSIPとnon-smoker NSIPのCT所見の違い
 crazy-paving pattern(敷石状陰影)がnon-smoker NSIPで多く、
 smoker NSIPでは少なかった

・重回帰分析では、
 NSIPだと、肺気腫のlikelihoodは増加
   (OR = 18.8; 95% CI = 5.3–66.3; P < 0.0005)
 高齢でも肺気腫のlikelihoodは増加傾向
   (OR = 1.04; 95% CI = 0.99–1.11; P = 0.08).

Conclusion
・肺気腫は「smoker+NSIPの患者」でも、「smoker+COPD」の患者でも、同程度の頻度で認められる
⇔上記患者と「healthy smoker」を比較すると、上記患者群で肺気腫が非常に多い
・smokerとnon-smokerのNSIPでCT所見が異なる

⇒上記より、喫煙がNSIPの何らかの病因である可能性がある。


喫煙による炎症が原因、肺気腫とNSIPを同時に起こすような遺伝的素因、環境要因などなど、仮説が書いてありました。

流し読みですが、なんかこう、イマイチでした。

だいたい間質性肺炎の病理がどこまで当てになるのか、常に疑問です・・・
 (病理の先生、スミマセン)

経過まできちんと追いかけて判断できるのは呼吸器科医だけの特権だと思います。
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特発性器質化肺炎(COP)の画像所見については、以前から少し疑問をもっていました。

教科書には、「COPの陰影では、volume lossを伴わないことが多い」とよく書いてあります。
しかし、実際には陰影の辺縁が凹状になっていたり、陰影内部の気管支が拡張しているように見える気がしていたからです。

その後、Radiology 2004; 232:757–761を読み、線維化を示すような所見も少しはある事を学んだのですが、これが臨床上どういう意義があるのかイマイチ分からないなぁと思っていました。
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今日たまたま、そのポイントについての日本からの論文を見つけました。素晴らしいです。


Comparison of pulmonary CT findings and serum KL-6 levels in patients with cryptogenic organizing pneumonia
British Journal of Radiology (2009) 82, 212-218 (大分大学)

Purpose
・cryptogenic organizing pneumonia (COP)患者のretrospectiveな検討
・high-resolution CT 所見とKL-6の値について検討する

Materials and Methods
・37例のCOP患者を対象
 KL-6正常範囲・・・20例
 KL-6高値・・・17例

Results
・CT所見
 KL-6正常群:consolidation 17例、ground-glass opacity 11例、
          Traction bronchiectasis 1例、architectural distortion 3例

 KL-6高値群:consolidation 13例、ground-glass opacity 13例、
          Traction bronchiectasis 7例、architectural distortion 13例

・経過:初期にステロイド投与を行われた患者はKL-6正常群16例、KL-6高値群16例
 ●1年間以内の再発率・・・KL-6正常群 2例(12.5%)、KL-6高値群 6例(37.5%)
                 統計学的有意差なし(p=0.103)

Conclusion
・traction bronchiectasisとarchitectural distortionがCOP患者のCTで認められた場合、serum KL-6が高値である可能性が高く、治療後の再発率と関連している可能性がある。



今後そのような目で見てみたいと思います。

直感的には分かりやすいのですが、「何故か?」については、臨床・病理・はては遺伝子解析などの詳細な検討が必要かもしれないと思いました。
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- Journal Watch シリーズ(JW) -

某大学・某医局のメーリングリストで行っていた企画を、今後はブログ上で行おうと思います。
日頃のJournal watchで目についた論文を斜め読み(かなり)して配信し、いろんな意見をもらって楽に勉強しようという企画です。

今回は「IPFとfibrotic-NSIPの予後因子」について。
「間質性肺炎では、CRP(臨床-放射線-病理)が大切だ!」とよく言われますが、ちょっと観念的で自分自身上手く飲み込めていません。せめて大切さの重み付けくらいして欲しい・・・と思っていたところでした。
また、現在CT画像を用いた呼吸器疾患の病態の研究をしているもので、こういう論文は参考になります。

Prognostic Determinants among Clinical, Thin-Section CT, and Histopathologic Findings for Fibrotic Idiopathic Interstitial Pneumonias: Tertiary Hospital Study
Radiology. 2008 Oct;249(1):328-37. Epub 2008 Aug 5.
(Samsung Medical Center, Sungkyunkwan University School of Medicine, Seoul, Korea)

Purpose
・UIPとfibrotic-NSIPの予後因子を、臨床情報・病理所見・CT画像所見から検討する。

Materials and Methods
・retrospective study
・対象症例:
 total 108 例(男性71例, 女性37例、61±8歳(mean±SD))
 (内訳)
  UIP 79例(男性60例、女性19例、63±7.4歳)
  fibrotic NSIP 29例(男性11例、女性18例、57±12.9歳)
  *外科的生検で確定診断・・・83例:UIP 54, f-NSIP 29
  *臨床情報+CT画像でIPFと診断・・・25例
   (診断基準:CT上、下肺野の容積の10%以上を占める蜂巣肺を持ち、
     ATS/ERS consensusの臨床・画像診断基準を満たすもの)
   *膠原病、過敏性肺炎などは除外している
・肺機能検査、BAL、thin-section CTを施行
・画像の検討:
 2名の胸部画像診断医が独立してスコアを判断(3ヶ月の間隔で2回ずつ)
 1mmスライス・1cm間隔のCT画像について以下の病変の広がりについて5%単位で評価
  ・overall extent of the pulmonary parenchymal abnormalities
  ・consolidation
  ・total extent of GGO
  ・GGO away from areas of reticulation
  ・reticulation
  ・honeycombing
  ・nodular opacities
⇒ a. 臨床情報
    年齢、性別、喫煙歴、症状持続期間、免疫抑制剤、FVC、DLCO、安静時PaO2、
    BAL中のリンパ球と好中球数
  b. 病理診断
    2名の病理医で再度レビューし、完全一致のUIP/NSIPと、診断不一致例に分類
  c. CT画像スコア
 と、予後の関係をCox regression analysesで検討

Results
・5年生存率(mean follow-up, 45 months)
 fibrotic NSIP…76%
 UIP…46% (P = 0.006)
・multivariate analysisで、以下の2因子が有意な予後因子
 high fibrotic score (reticulation+honeycombing):
   hazard ratio = 1.200 (P = 0.043)
 initial low DLCO level:
   hazard ratio = 0.973 (P = 0.025)

Conclusion
・UIP/fibrotic NSIPの患者では、fibrotic score(honeycombing+reticulation)が高いことと、受診時のDLCOが低いことが予後不良因子。

受診時CTでの線維化を示す所見が広いこと+呼吸機能検査値が低いことが生命予後因子であったという結果は、以前AJRCCMに出ていた強皮症の間質性肺炎の予後検討でも同様でした。当たり前といえば当たり前の結果でしょうか・・・?
ただ、結果として病理診断が予後因子から外れたというのは、呼吸器内科医としては正直ありがたい感じです。ちらっと呼んだDiscussionにもありましたが、病理医間の診断の"discordant"は非常に多いので・・・
せっかくなら最良のカットオフ値を出して、予後良悪の2群に分けてくれると臨床的にもっと有用だったかなと思います。

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  写真は、先月あるシンポジウムに行く途中に乗り継ぎで寄ったヒースロー空港での1枚。
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