カテゴリ:中毒( 1 )

本日はあまりいいネタがなかったので・・・いや、やる気の問題か・・・
季節に合わせて、ちょっと古いネタを。ご存知の方も多いと思いますが。
以前この症例を経験したことがあります。

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【銀杏】
・「中国大陸原産の1科1属1種の代表植物。現存する最も古い植物の一つで、その全盛時代は約2億年前と推定され『生きている化石』と言われる。古く日本に渡来し、神社や寺の境内には直径1m以上の大木がある」    (旺文社『エポカ百科事典』)
・「生きている化石」と呼ばれるこの木は、中生代(恐竜が地球を我が物顔に歩いていた)からあるという植物でも最も古い種類に属する
・幹は直立し、高さ30メートル、胸高直径2メートル以上になる
  葉身は扇状で、浅く2裂することがある。
  秋にあざやかな黄色に紅葉する
  5月、数枚の新葉とともに雄花あるいは雌花が出る
  種子は直径2.5センチの球形で、中に食用となる銀杏が入っている

【銀杏中毒】
歴史
・1596年中国の李時珍の「本草綱目」や、1708年日本の貝原益軒の「大和本草」をはじめとして、多くの書物に多量に食すると痙攣などの中毒症状を発現するとの記載がある
・でんぷんを34%含み、戦後の食糧難の時代に米の代用とされたため中毒が多発した
・日本では1930~1996で約70例報告され、死亡率は25%。死亡例は、6歳以下の小児がほとんど(74%)
・最近では、発生頻度は年間10例以下程度
(Wada & Haga(1997), Ginkgo biloba-A Global Treasure,  Springer-Verlag Tokyo, Japan, pp.309-321)

機序
・活性型Vit.B6は、主に肝臓や赤血球中で行われるGABAの産生に補酵素として重要な役割を持つ。銀杏中に含まれる有毒物質4'-O-methylpyridoxine(4'-MPN)が、この経路において活性型Vit.B6と拮抗し、GABAの産生を抑え、痙攣が生じる。
・基礎にアルコール多飲があると、肝障害や造血障害が生じ、活性型Vit.B6のレベルが低くなりやすいため、銀杏中毒を起こしやすい。また、小児でも生じやすい。
・アルコール→アセトアルデヒドが、B6-phosphate phosphataseを介し、活性型Vit.B6の加水分解を起こすという経路も。

どれくらい食べたら起こる?
・小児:7~150粒:5歳未満では、食べさせないほうがよいとも言われている
・成人:40~300粒
・報告の中で最小量は6粒(Takano et al, 1953)
・調理法は関係ない
 有毒成分である4’-MPNは熱に安定で煮ても焼いてもほとんど消失しない

症状
・摂取後1~12時間で発症し、90時間以内(半数は24時間以内)に回復する
・回復すれば後遺症は少ないが、死亡例もあり注意する
・主に嘔吐と痙攣
 腸肝循環するため約3時間ごとに約24時間痙攣を繰り返す
・循環器系:不整脈、顔面蒼白
・呼吸器系:呼吸困難/促迫
・神経系:痙攣(強直性/間代性) 、意識混濁、めまい、下肢の麻痺、縮瞳/散瞳
・消化器系:嘔吐、便秘
・その他:発熱

治療
・ジアゼパム静注(セルシン):痙攣に対して
・リン酸ピリドキサール静注:拮抗薬、8mg/kg投与
 (補酵素型ビタミンB6;ピドキサール、ビタメジン)
・痙攣を誘発するため催吐/胃洗浄は行わない
・活性炭・下剤:腸肝循環するため投与は有効であると考えられるが、上記薬剤で十分であるため通常行わない


2例をまとめて救急医学会の地方会で発表する予定でしたが・・・急患(多発外傷+肝損傷で重症)のICU管理ためギリギリまで移動できず、空港に着いたら飛行機が大幅に遅れており、結局間に合わなかったというオマケの思い出つきの症例でした。
酒飲みの方はご注意を。
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by tobbyK | 2008-11-03 23:55 | 中毒