カテゴリ:PE・DVT・肺循環( 5 )


CTの読影をしていると、無症状の患者さんに肺塞栓を見つけることが時々あります。

どういう意義があるのかなぁ・・・と思っていたら、先日以下の論文を見つけたので読んでみました。


Incidental Pulmonary Emboli in Oncology Patients: Prevalence, CT Evaluation, and Natural History
Radiology 2006:240:246-255 (テキサス、MD Anderson)


Purpose
・malignancy患者での偶然発見肺塞栓について、頻度とnatural historyをretrospectiveに検討する。

Materials and Methods
・retrospective study
・癌患者で、適切なmultidetector thoracic CTが肺塞栓以外の目的で撮影されていた患者を対象
 →403例(男性199例, 女性204例; age range,14–87歳; 平均55歳)
   CT撮影時入院していた人は31例 (7.7%)

・CT画像は2人の放射線科医が読影
 →肺塞栓の確定は、3人の胸部放射線科医が行った

・カルテを検討
 →患者データ、当時の読影での塞栓の指摘の有無、最初のCTから2年以内の死亡率

Results
403例中、16例(4.0%)で肺塞栓あり
c0177128_18561298.jpg


・癌の種類
 婦人科癌 (2/13, 15%)とmelanoma (4/41, 10%)が多かった。
c0177128_18563656.jpg


最初のCT読影で肺塞栓をきちんと指摘されていたのは16例中4例(25%)

・16例全例で多発性であった(=少なくとも一つ異常の葉枝で認められた)

・最初のCT読影で見逃された塞栓は、「孤発性」「小動脈」という特徴があった。

・その後下肢静脈の検査をされた10例のうち、6例(60%)でDVTがあった。

・最初のCTで肺塞栓と報告された4例中3例で肺塞栓の治療が行われていた 
 (*1例は紹介医に戻っていた)

・16例中2例で再び肺塞栓が生じた:
  1例は治療中にもかかわらず死亡
  もう1例は治療無治療の患者で生じた

Conclusion
・“Incidental pulmonary emboli”は16/403例 (4%)の癌患者で認められたが、最初のCT検査で報告されたのはこのうち4例のみであった。

・見逃しの要因は、「塞栓動脈が細い場合」であった。

・小動脈の肺塞栓でも、DVTが存在している可能性があり、そして再塞栓を起こす可能性がある。




癌患者の胸部CT読影の際は、肺動脈にも気をつけないといけないですね。

ちなみに、CT検査全般で偶然肺塞栓が見つかる頻度は1-1.5%、入院患者のCTで偶然肺塞栓が見つかる確率は4-5%とのこと。今回の論文では、外来患者で3.8%、入院患者で6%でした。やはり、癌患者は肺塞栓症のリスクと言えます。

この論文では、肺塞栓のあった患者さんでは、血小板が低めの人がやや多いようでした。
この点については思い出す症例があり、うなづいてしまいました。
[PR]
たいていの場合、CTで肺動脈が太いと、肺高血圧があると思っていました。
特に肺線維症ではよく見かけるんですが・・・
肺線維症の場合はあてにならんという話。

The Effect of Diffuse Pulmonary Fibrosis on the Reliability of CT Signs of Pulmonary Hypertension
Radiology 2008;249:1042-1049 (英国)


Background
・CTで計測した肺動脈の径は、肺動脈圧と相関する事が知られている
・肺線維症のある患者では肺高血圧症を合併する事が多い
・肺線維症のある患者においても、肺動脈の拡張は肺高血圧(PH)を示唆するか?

Materials and Methods
・右心カテーテル検査を施行した77例(39 men, 38 women)を対象
 ⇒2群に分類
   group A: 30 patients with pulmonary fibrosis
   group B: 47 without pulmonary fibrosis
c0177128_22353011.jpg

・計測項目:CTで計測
 肺動脈幹の径 (dPA)
 上行大動脈の径 (dAA)
 肺の線維化病変の広がり
 ⇒dPA、dPA/dAA ratioと、
   mean PA pressure(mPAP)、pulmonary vascular resistance index(PVRi)
   の相関を見た(Spearman rank correlation test)
c0177128_2235497.jpg

・また、dPAと肺の線維化病変の広がりやtotal lung capacity (TLC)との相関を、重回帰分析で検討した

Results
c0177128_2242140.jpg

group A:肺線維化のある患者群
no significant correlations
 dPAとmPAP; r = 0.23, P = 0.22
 dPAとPVRi; r = 0.23, P < 0.28

 dPA/dAA ratioとmPAP; r = 0.54, P < 0.005
 dPA/dAA ratioとPVRi; r = 0.48, P = 0.04

 ⇒ group Aでは、明らかなPHがなくても肺動脈の拡張が生じ、
    CT fibrosis scoreやTLCとdPAは相関しなかった


group B:肺線維化のない患者群
strong correlation
 dPAとmPAP; r = 0.67, P < 0.0001
 dPAとPVRi; r = 0.78, P < 0.0001

 dPA/dAA ratioとmPAP; r = 0.72, P < 0.0001
 dPA/dAA ratioとPVRi; r = 0.71, P < 0.0001

 ⇒ group Bでは、従来の報告どおり、肺動脈幹の径は肺高血圧の推測に有用
    (教科書的には35mmがカットオフ値)

Conclusion
・肺線維症の患者において、肺高血圧がなくても肺動脈の拡張が生じていた。
・それゆえに、肺動脈幹の径で肺高血圧を予測できない
 ⇔上行大動脈と肺動脈幹の比を用いると、少しは良い


線維化によるtractionにより、肺動脈が拡張すると言う仮説があるそうです。
でも、これでは説明がつかない部分が多いですね。(大動脈は?)
CTでの肺動脈幹の径は当てになるものとばかり思っていましたが、病態ごとに分けて考えるべきだったんですね。勉強になりました。
他の疾患でも見てみようと思います。
[PR]
呼気NOの使い道がこんなところにもあったとは。
肝肺症候群については過去のお勉強ノートにちゃんと書いていたのに・・・すっかり忘れていた。

Alveolar Exhaled Nitric Oxide is Elevated in Hereditary Hemorrhagic Telangiectasia
Lung. 2008 Oct 24. [Epub ahead of print] (カナダ)

Background
・肝肺症候群では、肺の微小血管が拡張しており、肺内シャントを生じる。
→このような患者では、呼気NOが高い事が分かっている
→肺胞毛細血管のNO産生上昇による
・肺胞毛細血管のNO過剰産生が、遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT、30-45%に肺動静脈奇形が認められる)において、同様の機序でシャント生成に関与していると予想。

Prupose
・HHT患者において、呼気NOが高いことを確認する。

Materials and Methods
・HHTの診断基準を満たした患者58例と、非喫煙の正常コントロール49例について検討

Results
HHT患者のプロフィール
・遺伝子検査の結果
endoglin mutation:23/54 (42.6%)
activin receptor-like kinase-1 (ALK-1) mutation:17/54 (31.5%)
SMAD4 mutation:3/54 (5.6%)
no mutations:11/54 (20.4%)
・29/58例が過去に明らかな肺のAVM指摘

呼気NOの結果
・呼気NO(200 ml/s expiratory flow rate)を計測
HHT:58例 12±3.5 ppb
非喫煙者の正常コントロール:49例 10.5±3.2 ppb
→有意差あり(p=0.02)

*HHT内での肺AVM(+)と(-)の比較では有意差なし
*多血症を伴いやすい疾患だが、HbとNOの相関はなし

Conclusion
・HHTでは、肺毛細血管でのNO産生が増加しているのだろう。
→これが肺AVMの形成に関与しているかもしれない。


☆過去の勉強ノートから抜粋

①肺動静脈瘻(pulmonary AVM)
・HHTを見たら30%に肺AVM、肺AVMを見たら60-90%にHHT
・常染色体優性遺伝なので、家族のフォローも大切
・下葉、中葉、舌区に多い

「診断基準:Curacao criteria」
1.繰り返す鼻出血
2.皮膚や粘膜の毛細血管拡張(口唇、口腔、指、鼻)
3.肺、脳、肝臓、脊髄、消化管の動静脈奇形
4.家族歴…一親等以内にこの病気あり
→満たす項目:≧3つ:definite、2つ:probable、1つ:unlikely

・分類
単純型:80%。1本の肺動脈が、静脈性の拡張部(nidus)を介し、直接肺静脈につながる
複雑型:20%。複数の肺動脈が、nidusを介して、数本の肺静脈につながる

・合併症
脳梗塞・TIA、脳膿瘍→この辺の合併症のため、死亡率10%
喀血

・治療
径3mm以上ならコイル塞栓、10mm以上ならOpeも検討
その他、部位、個数なども考慮

肺AVM・HHTは、過去2例しか経験がありません(両方ともコイル塞栓)
素晴らしい日本語のサイトあり

http://web.mac.com/masakomiyama/Kodomo/welcome.html

②肝肺症候群
・診断基準
1.肝機能異常:肝硬変が最も多いが、必ずしも重症度と相関しない
2.肺内血管拡張:コントラスト心エコー、血流シンチなど
3.低酸素血症:A-aDO2>15-20mmHg。立位での低酸素血症の増悪、呼吸困難の増悪が見られる事が多い(orthodeoxia)
→3項目満たすと診断

・病態生理(Lancet 363:1461-1468, 2004)
[仮説1]
肝障害
→門脈圧上昇
→腸管血流の変化
→腸管内におけるグラム陰性菌やエンドトキシンのtranslocationの増加
→tumor necrosis factor-α(TNF-α)、heme oxygenase由来のCOおよびNOなどの産生増加
→毛細血管血管拡張に働く

[仮説2]
肝肺症候群の動物実験モデルにおいてエンドセリンB受容体の増加
→NO産生の増加
→肺内血管の拡張
*肝肺症候群患者の呼気中NO濃度は上昇しており、肝移植後に正常化した。また、呼気NO高値とA-aDO2の開大が、正の一次相関を示したとの報告あり (Hepatology 26:842-847, 1997)
*メチレンブルーでNOの生成を抑制したところ、患者のシャント量と低酸素血症が改善したとの報告あり

・予後
メイヨークリニックの22名の肝肺症候群患者の診断後平均2.5年間の観察期間で、死亡率は41%であった(Chest 104:515-521, 1993)

肝移植評価の為入院した111名の慢性肝疾患患者において、27名(24%)に肝肺症候群が見られ、肝肺症候群の平均余命は10.6ヶ月で、肝肺症候群なしの患者の40.8ヶ月より有意に短かったという報告あり(文献記載なし)

肝肺症候群の存在は、年齢、Child-Pugh分類、血中尿素窒素とともに予後規定の独立因子であり、死亡率は肝肺症候群の重症度に相関していた報告あり(文献記載なし)


・・・いずれも、遭遇する機会は少ない疾患ですが、普通に呼吸器の臨床をしていれば必ず出会う疾患でもあると思います。時々思い出さないと。
[PR]
PEとDダイマーの話のついでに。
PEの診断に、非侵襲的で施行しやすい検査といえばCTですね。
今回の論文は2006年のものでちょっと古いですし、最近は64列MDCTでの論文も出ていますが、症例数が多いということで見直してみました。
AFPの9月号(AFP 2006;78(5):555-556)でも、この論文の解釈が載っていました。

Multidetector Computed Tomography for Acute Pulmonary Embolism
N Engl J Med 2006;354:2317-27.(米国)

Background
肺塞栓は多く、胸部CTが役立つと言う話が出てからは、胸痛患者ではみんなオーダーするようになった。
2つの疑問がある。
(1) how good is chest CT at identifying PE?
(2) how often is the CT positive when, in reality, there is no PE?

Materials and Methods
・8つの異なる施設での検討。
・PEが疑われた患者824例に対し、以下のテストを施行
 ①CT angiography of the chest
 ②CT venography of the abdomen/pelvis/lower extremities
   *4/8/16列のscannerで
 ③ventilation/perfusion scan
 ④ultrasonography of the lower extremities
 +α digital subtraction angiography
・Chest CT vs その他の検査という比較。
 *その他の検査のうち、一つでも陽性ならPEありとした。
 *全て陰性の結果の場合、3ヶ月後・6ヶ月後にイベント発生していないか確認。

Results
824例中、
○51例(6%)のCTは解釈不能だったため除外。
○残り773例において、
・胸部CTで発見できたPE:150/181
 感度83%(95%CI,76~92%)
 *6例に1例は見落とす!
   感度の最低値は76%であり、この場合4例に1例は見落とすことになる。
 *胸部CT+CT vgenographyにより、感度は90%まで上がるだろう
   →たった7%感度を上げるのに、コストや被爆の問題はどうする?
・胸部CTの特異度:96%⇔偽陽性が4%

☆Wells Criteriaによるpretest probabilityとあわせた検討
①pretest probability(高い/低い)とCTの結果(陽性/陰性)が一致⇒診断の裏づけ
  PPV/NPV いずれも96% 
②pretest probabilityとCTの結果が乖離した場合⇒CTの結果は信用できない
  probability高いのに、CTで陰性→この場合、CTでの見逃し率は40%
  probability低いのに、CTで陽性→この場合、CTでの偽陽性は42%
③pretest probabilityが中等度の場合⇒CTの結果は信用できそう
  CT陽性→PPV 92%
  CT陰性→NPV 89%
c0177128_19265569.jpg
    *クリックで拡大  CTA:CT angiogaraphy, CTV:CT venography

Conclusion
胸部CTは、probabilityが高い、もしくは中等度の患者において、よい検査である。
probabilityとCTの結果が乖離した場合、CTの結果に引っ張られてはいけない。
→その場合は、他の検査も行うべき。

このスタディでは4列のCTが多かったので、8列以上であれば精度が上がると思われます。
AFPにも書いてありましたが、「ベイズのモデル」の本当に良い例だと思います。
診断に際しては検査前確率が大切であり、検査は補助的に用いる方が良いと言う教訓。
検査だけを信じる→見逃し/無駄な抗凝固療法、いずれも嫌ですね。
[PR]
「Dダイマーは感度が高いので、陰性ならPEはまず除外して良いと思います」
良く聞くフレーズですね。
PE・DVT診断におけるDダイマーの感度は95%以上・特異度は25~60%くらいと報告されています。(測定法は色々、Am J Respir Crit Care Med 1999; 160:1043.など)
ゆえに“SnOut SpIn”の話で、感度が高い検査の例として良く出てきます。
でも、clinical probabilityの高い人では、Dダイマーを信じてはいけないとも言われています。(J Thromb Haemost 2005; 3:2465-2470)
しかし、ERでDダイマーが比較的簡単にオーダーできるようになった現在、clinical probabilityよりもDダイマーに重きを置いてしまう傾向が世界中にあるようです。

The Importance of Clinical Probability Assessment in Interpreting a Normal d-Dimer in Patients With Suspected Pulmonary Embolism
CHEST 2008; 134:789-793
Leiden University(アムステルダム、オランダ)

Background
・d-dimer testはpulmonary embolism (PE)が疑われる患者で広く用いられている。
・では、d-dimer正常の場合はどうだろうか?

Materials and Methods
・臨床的にPEが疑われた1,722例。
・このうちd-dimer正常例(563例)において、3ヶ月間のPEとvenous thromboembolism(VTE)発症率を調べた。
 →Wells criteriaを用い、臨床的に疑わしい例と疑わしくない例に分けて検討。
c0177128_2251285.jpg
      
Results
・3ヶ月間でのVTE・PEの発生率:
 全体・・・2.3%(95%CI, 1.4~3.9%)
 ①PEらしくない群(Wells criteria≦4) n=477例
   5例=1.1%(95%CI, 0.4~2.4%)
   *2例は初診時にPEと診断され、残りの3例はフォローアップ中にVTEと診断された。
 ②PEらしい群(Wells criteria>4) n=86例
   8例=9.3%(95%CI, 4.8~17.3%)
   *全例がPEと診断された。
     うち7例は初診時に診断され、残りの1例はフォローアップ中に診断された。
 ⇒両群のVTE・PE発症率には有意差あり(p<0.001)

Conclusion
・clinical probabilityは重要である。まずこれを検討し、その後にd-dimerを考慮する。
 ⇒Dダイマー正常だからと言って、臨床状況を無視してはならない。

Dダイマーの正常値と同じくらい、Wells criteriaも覚るべきですね。
脳細胞1個1個を貴重に思う年齢になってきたので、カンペにしておこう・・・

〇本日のサッカー
ところでサッカー日本代表、ウズベキスタンと引き分けのようですね。
フランスW杯、コンサドーレ札幌、横浜マリノスでやってきた岡田監督のサッカーは大嫌いでしたが、まだ戦術がはっきりしていたように思います。今はなにがやりたいのかよく分かりません。
オシム監督の時、1人がボールを持ったら3~4人が一斉に走り出していたのが、もう遠い昔の様です。あの頃は夢があったなぁ・・・。そういえば一度オシムを間近で見たことがあります。長身の男前でした。
[PR]