IE9ピン留め

肺腫瘍のラジオ波

2週間くらい前に、肺腫瘍に対するラジオ波凝固療法(RFA)の講演を聴いて来ました。
関西ではメインに施行されている、大阪市立大学と岡山大学の放射線科の先生方から貴重なお話を聴かせて頂きました。いくつか質問もさせて頂き、とても勉強になりました。

長くなるので原理や手技等は論文や本をご参考ください。
今回は、気になっていたポイントについてメモしたものを。
                              こんな感じ
【費用は?】
約30万円(含2泊3日の入院費、1回分)
・保険適用なし
・現時点では、厚生省に申請を出して通っている施設のみ、高度先進医療としての混合診療が認められるとのこと
 (*完全に自由診療でやっているクリニックもあるとのこと)

【適応は?】
「本来は手術適応だが、肺機能が悪い、並存症、転移性の肺病変が複数ある、など、何らかの理由で手術が難しい症例」が原則適応。
厳密な基準はなく、症例ごとに決めているのが現状。
*岡山大学と大阪市立大学の判断基準(あくまで原則とのこと)*
 ・何らかの理由で根治切除不能
 ・1-2.5cm。大きくても3cmまで
 ・2ヶ月以上の生存の見込み
 ・PaCO2>60 Torrはだめ
 ・HOT症例はだめ
 ・麻痺はだめ
 ・肺高血圧もだめ 
 ・ペースメーカーはだめ
 ・心臓・縦隔・5mm以上の太さの血管に接している腫瘍はだめ。1cm以上離れている。
 ・1度の治療では3箇所まで
 ・FEV1>1.0 L
 ・血小板>5万、INR<1.5

【効果判定法は?】
・CTで。
 治療後、腫瘍周囲に出血によるリング状のすりガラス状陰影が出現(hemorrhagic rim)
 ⇒空洞が出来る
 ⇒その後陰影は収縮していく
   完全治癒していれば、索状影のようになる⇔局所再発あり
・PETも有用かもしれない
 ウサギの検討では、治療直後に見るのがよさそう
 ⇒その後は炎症のためSUV↑
 ⇒8週間後にSUV↓

【成績は?】
局所制御率69%とのこと(1年間)
 ちなみに、Radiology 2007;243:268-275.では、
 3cm以下の腫瘍の局所制御率は以下のとおり
 ⇒83%(1年), 64%(2年), 57%(3年), 47%(4年), 47%(5年)

【合併症は?】
・横隔神経損傷
・空気塞栓
 焼いた時にエアが入る
 *RFA中に頚動脈エコーすると、空気が脳にとんでくのが見えるらしい(!!)
  →3-8μmのエアなので、脳塞栓は少ない
・熱い
・痛み:胸膜に近い腫瘍が痛い
    *岡山では、半数くらいで硬膜外麻酔をしているとのこと→きちんと手技を行うため
・気胸:20-30%
・血痰:10%くらい
・IP:気胸→IP急性増悪という例はあるらしい

*その他、大きい腫瘍に対しては、先にRFAを施行し、その後に放射線照射を行う併用治療もされていました。腫瘍はしっかり小さくなっていました!

「定位放射線照射との差はどう考える?」
「現在の適応は、少なくとも“局所の根治”を目指しているようだが、肺癌の場合は緩和も重要。そういう使用法は考えていないのか?」
など、いくつか質問させてもらいました。まだ始まったばかりなので、データをそろえていき、これから使用方法を色々考えていくような感じでした。

大変勉強になりました。
                大阪の朝. かなり不定期な早朝ランニング・・・  
Commented by k at 2008-10-20 10:21 x
いつも、お世話になっています。
そのうち投稿させて頂きたいと思います(COPDネタ等で)
肝臓ではよくやられていますが、肺では余りやられていないですよね。以前勉強した時は、気胸の頻度が多い印象でしたが、約20-30%なんですね。勉強になりました。
Commented by tobbyK at 2008-10-20 18:24
いつもどうも。投稿よろしくお願いします。
次回の東京訪問は未定です。決まったら連絡します。
ラクーア行きたい・・・
Commented by TT at 2009-01-02 23:11 x
はじめまして。突然、古い記事に書き込みさせていただく無礼をお許し下さい。
実は、年末に私の母が転移性肺腫瘍との診断を受けてしまい困っています。
調べたところ、ラジオ波治療というものが効くらしいとのことがわかり、いろいろ調べている最中です。
ブログ主様のレポートはとても参考になりました。
ただ、一つ気になる点がありましたので、さらに詳しいところをお教え下されば幸いです。

「1度の治療では3箇所まで」とありますが、これはなぜなのでしょうか?
もっと、多い場合は、どうなるのでしょうか?
Commented by tobbyK at 2009-01-03 02:33
TTさん、コメントありがとうございます。
お母様の事、ご心配だと思います。

私は実際にRFAの治療をする立場ではありません。また、RFAは未だ明確なエビデンスが出ていない領域です。申し訳ありませんが、私が知る範囲内で、一般論としてお答えさせて頂きます。

「1度の治療で3個まで」という基準は、治療による合併症を考慮して設けられた基準だと思います。ただ、「1度に4個以上RFAで治療したから合併症が増えた」というような研究データを自分は把握しておりませんので、明確な研究データに基づいたものとは言えないと思います。

治療箇所が増える事の問題としては、まず、治療時間が長くなってしまう点があります。これは、患者さんの体力的な負担や、合併症の増加につながると考えられます。
また、RFA では腫瘍だけでなく周囲の肺も少し焼いてしまいます。腫瘍の大きさや部位によっては、1度にあまり多くの病巣を治療すると、正常肺も大きなダメージを受けます。結果として肺の機能が低下したり、このブログに書いたような合併症が増える可能性が高くなると考えられます。
Commented by tobbyK at 2009-01-03 02:33
逆に言えば、サイズが小さく、腫瘍の部位も治療可能な範囲内であれば、一度に4個以上治療可能な場合もあるかもしれません。このあたりは、実際に治療を行っている専門医の判断になると思います。
このように、本来は患者さん個々で治療法を判断すべき所です。しかし、RFAはまだ確立した治療法ではないため、行き過ぎた治療で患者さんに不利益が生じないよう、一応の基準として「一度の治療で3個まで」と決めているのだと思います。

現時点では、病巣が3個以上の症例では、数回に分けて治療をしているようです。(そのような症例についても、この時の講演でもお話されていました)

ご存知と思いますが、転移性肺腫瘍の治療法は、RFAだけではありません。手術、放射線、化学療法など・・・いずれの治療法においても、原発巣の種類や活動性、ご本人の基礎疾患・全身状態が特に重要な要素となります。是非、主治医の先生とよくご相談されてください。

また新しい情報が入りましたら、ブログにアップいたします。
お母様はもちろんですが、TTさんも心身ともに大変だと思います。寒さも本格的になっておりますので、少しでもお体にお気をつけてお過ごしください。
Commented by TT at 2009-01-03 12:25 x
tobbyK様、お正月なのに、見ず知らずの私のご相談に乗っていただき本当にありがとうございます。
やはり、一回の治療時間が長くなるのは好ましくないわけですね。
CTを長時間浴びるのもよくないのでしょうね。
実は、母は5年前に脳梗塞を患っており、気になるところです。
幸い軽症で、原因とされる高血圧傾向も最近は120前後で安定していますが、バイアスピリンを長期にわたって服用しています。

>転移性肺腫瘍の治療法は、RFAだけではありません。

免疫療法も受けられる方がよいとも聞くのですが、種類が多く、病院によって扱う療法が限られているようなので、これまた困惑してしまいます。
複数の病院をかけもちする患者さんをよく見聞きしますが、そうせざるを得ないのでしょうか?

>寒さも本格的になっておりますので、

ありがとうございます。この寒さというのは精神的にもきついです。恐怖がかきたてられます。
宣告後、頭の中の混乱がおさまらない状態です。
今、自分にできるのは何かと考えると、フコイダン商品なるものにも手を出しそうです。しかし、あれも高分子と低分子とで効用論争があるようで躊躇しています。
Commented by tobbyK at 2009-01-03 21:44
TTさん。

ご存知と思いますが、バイアスピリンはいくつかの検査や治療において注意すべき薬剤です(止血しにくくなるため)。主治医の先生とよくご相談下さい。

免疫療法については、癌治療においてまだスタンダードな治療法とはされていないと思いますし、費用が比較的高額という問題があります。しかし、効果があった症例も報告されているようです。私の担当患者さんでも、数人の方が免疫療法をなされていました。私は、化学療法等と免疫療法の併用自体は問題にしていませんでしたが、保険適応でないため、免疫療法については他のクリニックに受診していただいていました。丸山ワクチンについては他院から取り寄せていただき、自分の働いている病院で使用したこともあります。
臨床試験として、免疫療法(「活性化リンパ球や樹状細胞など」)と化学療法等を併用を行っている大学病院はあると思います。主治医の先生とご相談下さい。
Commented by tobbyK at 2009-01-03 21:44
フコイダンについては、比較的多くの担当患者さんが併用されていました。ただし、フコイダンもまだ癌治療のスタンダードではなく、金額面での問題があります。特に大きな副作用はないようですので、今のところ患者さんが服用されるのを拒否はしていませんが、効果の程は正直よく分かりません。

>この寒さというのは精神的にもきついです
愛するご家族のことで悩まれるのは当然の事です。変な言い方ですが、TTさんが悩まれることは、“正しいこと”だと思います。私に言えることはこの程度ですが、お体だけは少しでも休まれるよう、気をつけてお過ごし下さい。
Commented by TT at 2009-01-04 20:31 x
tobbyK様、ていねいにお返事下さりありがとうございます。
一人では冷静な思考ができそうにないので、こうしてお相手していただけると本当に助かります。

服用している薬は病院側にすべて伝えてあるのですが、バイアスピリンについては、念のため、もう一度告げておきます。

ネットで調べてみると、「凍結療法」というのもあるようですが、慶応大でしか行われていないみたいですね。
中国では盛んに行われているとか書いてあるので、日本でも普及させて欲しいです。
参考記事URLを入れておきました。

ただ、この記事の2ページ目で一つ気になるくだりがあります。
「誘導針を抜く際に腫瘍が撒き散らされる危険性も心配されたが、…」とあるのですが、この点はラジオ波の場合はどうなのでしょうか?
もっとも、そんなことを気にしているだけの余裕がない状況なんですが…
Commented by tobbyK at 2009-01-04 21:28
TTさん。

CTガイド下での肺腫瘍の治療法(経皮的治療法)としては、TTさんのおっしゃられた凍結療法、そしてRFA(ラジオ波)、その他にマイクロ波、光化学療法があります。おっしゃられるとおり、様々な方法から選択できるようになると良いですね。

>「誘導針を抜く際に腫瘍が撒き散らされる危険性も心配されたが、…」
RFAも皮膚から誘導針を刺し腫瘍に到達する手技ですので、誘導針を抜く際に、針についた腫瘍細胞が胸の中や筋肉・皮下組織などに撒き散らされる(播種といいます)可能性があります。
凍結療法の報告では、約0.6%くらいに播種の合併があったとされています。CTガイド下肺生検(針を刺して細胞を採取し診断する手技)では、約0.06%くらい播種の合併が報告されています。RFAでもその辺りと考えるのが妥当かと思います。

播種するかどうかに関しては、腫瘍の種類や、針についた腫瘍の量、ご本人の全身状態などが影響すると思います。

>もっとも、そんなことを気にしているだけの余裕がない状況なんですが…
お察し致します。

主治医の先生と、くれぐれも良くご相談ください。
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