お題その4の解答編
お題その4 「先生、どっち向きが良いですか?」の解答編です。
遅くなってすみません。
本業がなかなか進まないもので、しばらくブログから離れていました。
では、Nunn、Westなどの教科書を参考に解説します。
原則的には、どのような体位であれ、下側になっている肺の領域での換気量が多くなります。
立位なら、下葉。
背臥位なら、背側部分。
腹臥位なら、腹側部分。
側臥位なら、下になっている方の肺。
これは、重力と胸腔内圧が、肺の膨らみ方に与える影響のためです。
簡単に言うと、もともとつぶれている肺のほうが、吸気時の伸びシロが大きい、という感じでしょうか。
(*もちろん、正常肺に限った話です)
さらに側臥位の場合、腹部臓器の重みにより下側の横隔膜が上がり、
下側の肺を圧迫して縮めます。
反対に、上側の横隔膜は下がり、また胸郭が伸びて肋間も若干開くため、
上側の肺は広がります。
一見、広がった上側の肺の方がよく見えますが、広がっている肺は呼吸による動きが少なくなってしまい、換気量(=出入りする空気の量)としては、圧迫されて縮められている下側の肺の方が大きくなります。
そして換気量を増やすと、高炭酸ガス血症を改善する事が出来ます。
次に、肺の中での血流の問題です。
重力の影響のため、やはり下側になっている肺領域で血流が多くなります。
肺の部位による血流量の差は、先に述べたような部位による換気量の差よりも大きいといわれています。
で、酸素化の改善のためには、換気と血流の割合をちょうどよくする必要があります。
この患者さんの場合・・・
左肺は動きが悪いので換気量は少ないが、血流は保たれている=無駄な血流が多い
そこで、換気を増やし、無駄な血流を減らすためには・・・
「正常な肺を下にするような側臥位を取ればよい」、ということになります。
いかがでしょうか?
現時点での私の理解ですので、間違いや知識不足があるかもしれませんので、
その際はご指摘いただけますと幸です。
また、これは理屈上の話で、現実は肺病変の状態によって変わってしまいます・・・
(予想と反対の結果になった経験もあります)
コメントでご指摘がありましたように、患者さんの状態が許せば、色々な体位を試してみるのが現実的かもしれません。。。
最近注文した本が、全部当たりだったので、紹介します。
「Asthma and COPD: Basic Mechanisms and Clinical Management」
分厚くてお値段も高いですが、自分が知りたい内容が分かりやすくまとめてありました。
頑張って読みたいと思います。
「呼吸のバイオロジー なぜ呼吸は止められるか」
面白い、の一言です。
「呼吸器科医」と名乗るためには、日常臨床に必要な知識はあくまで必要条件であり、
「肺とは?呼吸とは?」についても一度深く考えねばならんと思います。
「RUN」
小学5年生の時に母親が自殺。
自分に宛てられた、たった3行の遺書。
その意味を問い続けながら海外で闘う日本人サッカー選手のドキュメントです。
家族って、何なのでしょうね。